くちぶえ
- 南1-2ホール | O-53 (小説|純文学)
- くちぶえ
- 大和ヌレガミ
- 書籍|文庫判(A6)
- 204ページ
- 1,000円
- 2026/6/11(木)発行
青春を美化しない
青春群像劇。
就職氷河期まっただ中の1998年。大学を卒業するも目的意識もなく、深夜の電車清掃バイトをしているフリーターの谷崎は、元芸人の宮本に誘われるがまま、お笑いコンビ「アシュラチック」を結成する。
夢を追う者、夢にとらわれた者、夢なんてなかった者、夢を追えない者、現実を生きる者。
シニカルな分析家・谷崎と、破天荒な行動家・宮本。二つの視点から、さまざまな若者たちの人間模様を描く青春群像劇。
いつもなにかに苛立ち、何者かに追い立てられるように焦っていた。そのぶん、人一倍だれかを笑わせ、笑っていた。
二十代前半の輝かしき、あの頃。もう一度やり直せるとしても、ちょっとしんどいから無理だと思う。
苛立ち、焦りながらも、とにかく行動することだけは止めなかった、約半年間の濃密な記憶。
※以下、試し読みです。
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※ 谷崎たちのハローワーク
「舞台っていうのはな、中途半端にウケて喜んでいるのはよくないと思わないか? 爆笑、もしくはダダ滑り。ギャンブルのような緊張感をオレは味わいたいのさ」
ライブの舞台袖で、宮本は大胆不敵に笑った。
「いや、お金をとっている手前、ダダ滑りはあかんやろ。せめて、ややウケくらいはもらわないと」
舞台ではファングねえさんが、ダダ滑りしている。声の汚いおばあちゃんが保険の勧誘をしていた。この人は滑ることでまったく精神的ダメージを受けていない。が、精神的にタフなのと愚鈍なのはまったく意味が違うとわかった。
「あいかわらず、ファングねえさんはすごいな、五分間でたったの2クスクスじゃないか」
ファングねえさんが最悪にやりにくい空気を作ってくれた。その直後が俺たちの出番だった。
「さ、オレたちのターンだ。ギャンブルを楽しもうぜ!」
「お前、パチスロも競馬もぜんぜんやらへんやんけ」
照明が消えている間に、パイプ椅子を抱えて舞台中央にむかう。床に貼られた蛍光テープの位置に椅子をセッティングし、そこに座ると、じょじょに舞台が明るくなる。
「そうですか、流れ作業は厳しいですか、じゃあ、こんなのはどうですか?」
コントの設定はハローワークだ。職を求めてやってきた宮本にたいして、職員の俺が変な仕事を紹介してボケるという内容だ。ついにヒントをつかんだんだ、見てくれ、と宮本にネタのプリントを渡されたときは、人間くささのあふれるコントを書いて成長をとげたのかと期待したが『ハローワークでワックワク』と大きくタイトルが書かれているのを見てガッカリした。
俺が宮本に変な仕事を紹介し、それなりにウケている。ここまではギャンブルとはほど遠いオーソドックスなコントだ。だが、三ボケめで仕掛けに入った。続きの試し読みはこちら↓↓↓
https://note.com/nuregami/n/n9ec18c8b388d
