なぜ、魔法道具は事故を起こしたのか――? 思考錯誤しつつ、事故原因などを解明し、一年間を駆け抜けていく物語。
魔法道具管理局――通称”魔道管局(まどかんきょく)”にある、道具検査課には、ある魔法道具が持ちこまれていた。その魔法道具がきっかけで事故が起きたため、原因究明をして欲しいという依頼だった。
検査課に所属するタチアナは、道具の魔力を探知したり、事故現場に行ったりして、原因を解明していく。
癖のある上司ハーマン、頑張り屋の後輩キムと共に、様々な道具を調べながら、タチアナは決意を胸に秘めて、一年を駆け抜けていく。 魔道管局シリーズ第3弾。
web版→
https://ncode.syosetu.com/n0904ke/※『魔道管局の処分許可』『魔道管局の道具認可』と同一世界観のお話です。
(魔法道具管理局の別の課の話となり、それぞれ独立して読めます)
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★試し読み★ 第1話より
一人の女性が腕を組みながら、大きな机の前に立っていた。そして目の前に置かれたある物を見て、首を傾げる。 置かれていたのは、幼児向けの乗用玩具だ。自転車のように前後に車輪がついているが、足を置く踏み板はない。座席に座った状態で、足で地面を蹴ったり、止めたりすることで進むものだ。動きが活発になってきた二、三歳の子どもから楽しめる、おもちゃと聞いていた。
女性は口元に手を当てて、それに顔を近づける。
「うーん、何回見ても変なところはない気がする。なら、なぜ事故は起きたのか?」
おもちゃの傍に置いてある書類を手に取り、ぱらぱらと見返す。
乗っていた幼児が突然、このおもちゃから振り落とされたという。幸い大きな怪我には繋がらなかったが、幼児は酷く泣き、両親は急いで病院へ連れて行ったそうだ。
その後、両親は製造会社に問い合わせをし、原因究明の依頼と慰謝料を請求した。だが、会社側で調べても原因がわからず、結果として、ここ〝魔法道具管理局(まほうどうぐかんりきょく)〟にある、道具検査課に話が回ってきたのだ。
道具検査課は、魔法道具に不具合がないかなどを、人間の手や分析機器を使って、検査する課である。今回のように異常があった道具について、その原因を追究して欲しいという依頼がくる場合もあった。
女性は何度目になるかわからないが、おもちゃに触れて、目を閉じた。じっくりと時間をかけて、おもちゃの中に通っている魔力を感じ取る。微弱であるが風属性の魔力を感じ取れた。
このおもちゃは走りやすくするために、風の魔力がほんの少し込められている。それが売りでもあるが、今回に限っては裏目に出てしまったようだ。
「考えられる一つの原因は、このおもちゃに他の属性の魔力が実は込められていて、何かの加減で魔法が発動してしまったというところか……。けど、他の属性の魔力残滓は感じないんだよな」
目の前にあるおもちゃは、実際に事故を起こした魔法道具。
女性の魔力探知は課内でもかなり優れており、おもちゃに対して僅かでも他属性の魔法が込められた形跡があれば、察知できると自負している。それが感じられないと言うことは、先ほど呟いた仮定は違うということだ。
「外的要因で事故が起きたとなれば、現場に行かないとわからない。……ここで悩んでいてもしょうがない。とりあえず、わかっていることを報告してくるか」
散々時間をかけて、これしかわからなかったのか、と嫌みの一つでも上司に言われそうだ。だが、なるべく早く原因究明をして欲しいと言われている中、いつまでも一人で考え続けるわけにもいかない。あまり気乗りはしないが、広げていた書類を持って、検査室を後にした。