父を送る《改》
- 南3-4ホール | し-42 (ノンフィクション|エッセイ・随筆・体験記)
- ちちをおくるかい
- star_of_bba
- 書籍|B6
- 262ページ
- 600円
- https://aji-frai-teikoku.ameb…
- 2024/5/19(日)発行
- ▼こんな人へ
・親が苦手
・誰かの最期を世話するかも
・実話を読むのが好き
文学フリマ37で大好評、完売となった「父を送る」を大幅に読みやすく改訂しました。 少々クセの強い父親との縁を切ろう、と一度は覚悟を決めた娘が最期まで引き受けることになったキッカケとは── 訪問医療や介護施設の実情から葬儀の流れまでを記録した、これからお看取りをする人への一助となる(かもしれない)一冊です。-----試し読み-----
遠出した翌週、父親に電話をかけて実家に向かった。
「悪いけど迎えに行けないから、」
と言いかける父親の掠れ声をさえぎって、
「分かってるよ。自分で向かうつもりだよ」
と返した。
駅前のコンビニで、とにかく食べられそうなものを手に取った。お茶、ポカリ、ゼリー状の栄養ドリンク、温めるだけのお粥……こんなもんだろう。
暑い日だった。コンビニのビニル袋の手さげ部分が腕に食い込むくらいの大きさになった重い荷物を抱え、ふぅふぅと言いながらバスに乗り、最寄りのバス停で降りて五分ほど歩くと実家に着いた。
持っている合鍵でさっさと玄関を開ける。居間に入ると、父親はリクライニング式の一人掛けソファに、埋もれるように座っていた。私の想像を超える具合の悪そうな様子と痩せっぷりに、ほんの一瞬言葉が詰まった。
「すごい痩せちゃってるじゃん」
「誤嚥が怖いから何も食べられないんだ」
結局、息苦しい原因は分からずじまいで、とにかくまた来月通院してその時に相談する、と言う。声の掠れはますます酷くなっていて、普通に会話しているだけなのに肩が大きく上下していた。
立とうとする父親を制し、買って来たものを大きな声で説明しながら冷蔵庫などにしまう。ひと通り片付け終わると、いつの間にか父親はソファから移動していた。何やら書類の束を持って畳の上に座り込み、改まった顔をしている。
