こちらのアイテムは2026/11/8(日)開催・文学フリマ東京43にて入手できます。
くわしくは文学フリマ東京43公式Webサイトをご覧ください。

秋日影少女

  • 南1-2ホール | P-47 (小説|純文学)
  • あきひかげしょうじょ
  • 詩歩子
  • 書籍|A4
  • 15ページ
  • 800円
  • https://kakuyomu.jp/works/168…
  • 2023/8/10(木)発行
  • 彼岸花と透明な少年の傷心、それとも日影か。
    世の中に傷ついた彼を癒す、少女の故郷に伝わる伝説と織りなす、色無き風の物語。
    初代天皇、神武天皇生誕地で知られる、宮崎県高原町皇子原公園を舞台にした小説。
    リストカットが止まらない少年と、彼を癒す少女の物語、彼岸花が綺麗な公園です。
    報道特集に出演しました。
    リンクを貼っております。
    現代ビジネスから取材を受けたこともあります。

    https://gendai.media/articles/-/142150

    作家・豆塚エリさんが購入してくださいました! 豆塚エリさんは自殺対策などで多数のマスコミに出演されている方で文学フリマには初期の頃から参加されています。
    ≪秋日影少女 出だし≫

     心の箱庭に咲き誇る彼岸花。終末論を知りもしない、日常という水彩画に一滴の血を垂らす、不吉な花。感傷的な、独りきりの少女のように刹那を呪う、あの赤い花。君が前に読んだ本は、何というタイトルだったんだろう。確か、『草の花』というタイトルだった気がする。私も知らないような小説家の本。君が自らつけた、傷跡は一生消えない。  二人だけの秘密の儀式。あの赤い涙はどこまでも、綺麗だったのに傷心は一生癒えやしない。君が声変わりする前の、幼い頃からつけてきた傷跡。私にはその血で滲んだ傷を癒すことしか、できない。己の白い肢体を残酷な戒律のように傷つける、透明な少年の月長石のような淡い影。透き通った玻璃によって傷ついた、たくさんの聖痕と心の闇路に飛翔する、妖霊星の秘め事。  傷跡から滲み出した血はしとどに頬に濡れる、涙の苦い味がしたような気がした。道端や畦道が色鳴き風に沿いながら、無数の彼岸花が咲き乱れている。地区の婦人会のメンバーが植えた、彼岸花が土手や空き地まで隈なく生え、その鮮やかな花弁は熟成したワインを霧吹きで、まぶしたように赤々と染まっていた。その赤さと対比するように空は青く、霧島山が禊をし、幾許かの不安を祓ったかのようによく垣間見えた。  真珠色の雲が主体的に晴天を告げれば、羊雲は綿飴のようで、ここまで空が青くなることなんてあるんだ、と私は発見する。遠くに続く横断歩道を見ると、ゆるりと動く人影が見え、それには確かに見覚えがあった。 「真君?」  私はつい、その名を口にしていた。両目を凝らし、やっぱり、あそこで歩いているのは真君だ、と合図するかのように何度も確認した。君も私の物陰を察したのか、一切、陽光に焼けていなそうな、白い手で大きく振った。  やっと、会えた。やっと、会えたんだ。私はつい、小走りになり、乾いた路上で少しこけそうになりながらも、溢れ出る歓喜でどうか、なりそうだった。道端で会うなんて、出来すぎたドラマみたい、と思いながらも、私は手ぶらで近所を散歩していたのだ、と今更になって気が付いた。 「逃げてきた」  目的地に辿り着いた、君の声の波はとても小さかった。 「どういうこと?」  私はつい、口を走らせてしまい、君もちょっとだけ、浮かない表情をしていた。

    ※続きは同人誌で!


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