異母弟・慧の母が死んだ。訃報を受けた兄・修一は、父を連れて行く約束を果たせぬまま静岡へ向かう。
裕福な家で育った修一と、水商売の母のもと荒んだ三畳間で少年時代を過ごした慧。大学進学の春に出会った二人は、埋まらない距離を測りあぐねたまま年月を重ねてきた。母の葬儀の週末、棺の中に残された不均一な赤いマニキュアは、不器用に愛することしかできなかった女の人生を静かに物語る。愛を信じないと言いながら誰よりも深く愛することを知っている弟と、弟が自分を通り越して父を見ていると知りながら惹かれることをやめられない兄。
母の葬儀の行われる週末三日間、互いを傷つけ、言い争い、それでも離れられない二人の間で、長年積み重なってきたものが、ゆっくりと動き出す。