仙を祖とする者、常に芳醇な花の匂いをまとい人心大いに和ませる。
花街には花生——花仙の末裔が存在するという噂が芽吹いていた。
ある秋の夜、子喬(シキョウ)は友人と共に訪れた花街にて一人の娼妓と出会う。
ヨルガオを思わせる、柔らかな匂いをまとった人だった。
数日が経とうと子喬は娼妓を忘れられず、いっそ会いに行ってしまえと腰をあげる。
しかし肝心の手がかりはあの夜返しそびれた手拭いに残る香りと己の記憶のみ。
籍を置いている見世はおろか、名前さえ聞きそびれていたのである。
途方に暮れかけたそんな中、子喬は一人の男と出会う。
練香屋の霜燕(ソウエン)と名乗る男は手拭いに焚き染められた香を嗅ぐや、これは己が卸している香に違いないと言う——。