⚫︎摘発されて潰れたガールズバーで出会った2人の少女。濃密な友情と、自他の境界が曖昧な若者の共依存の話。
…などなど。何でもない日常。でもキラキラで、触れたら壊れそう。そんな短編6篇を収録。
友愛、純愛、家族愛、自己愛…少しズレているけれど愛の話。
2025年 第6回文芸思潮新人賞入選作、ウェブ再録を含む新刊です。⬇︎試し読み⬇︎
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妖精ちゃんが死んだ。
私たちは切れた唇を舐めて潤わす悪循環のような、一時的な延命でドーナツの穴を埋めていた。
摘発されて潰れたガールズバーで出会った私たちは、その近くにある名前も知らない、遊具も何もない公園でよくたむろしていた。
歌舞伎町の量販店で買った足の形が透けるくらいに薄い布切れのセーラー服に袖を通し、お互いのスカーフを巻きあった。妖精ちゃんの長いまつ毛が私にぶつかりそうになったとき、初めて彼女の本当の名前が知りたいと思った。(つづく)
俺たちはそういう“設定”だった。
だから、大空マサキの未成年喫煙が小さなゴシップとしてネットの中で炎上したときも、「俺は生涯アイドル畑に根を張るダイチで〜す」なんて言って、素知らぬフリをして、俺はライブのMCでちょけていた。
真っ暗闇から始まるデュエット曲。これが俺たちの1番の人気曲だった。マサキは、ライブ前にいつも小さく唇を噛む。ざわめく暗闇の中でも俺たちは呼吸を合わせた。目の端に非常灯だけが緑色に光る。音楽が鳴り、目の前がぱっと白くなって、舞った埃がキラキラと俺たちを包み込む。俺たちがハモると、歌声を掻き消すように歓声が轟き、箱が揺れた。
ライブ終わりの握手会でも「今日のデュエットの、ハモリがね、最高だったよ。…..あのね、えっと、なんだっけ……」少女はそう悩んでいる間も俺の目を離さない。次にハッとした表情を浮かべると、「衣装も新しくなったんだね。ダイチくんがね、キラキラしていると思ったらね、ダイチくんの汗だったの。今日もありがとうね」タイマーが鳴って、最後にインスタントカメラで写真を撮る。カメラのシャッターが鳴り終わると、握り合った手を解く。少女は、今しがた受け取った写真をぱたぱたと振りながら「今度使ってるファンデ教えてね」と、声が遠のいていく。ドラッグストアで適当に買った安いファンデのパッケージを頭の中に浮かべながら、俺は次の女性へ笑みを向ける。
タバコを吸ってたのはマサキの兄だったけれど、たぶんそれに気が付いたのは俺だけだった。俺とマサキは背格好が似ていて、歳も同じ。どこにでもいる、しがない地下アイドル。“大空と大地”はふたりでひとつ。俺たちはライブ終わりのシャワー室でも興奮した体を洗い流しながら、今日のライブの感想を語り合っていた。(つづく)
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