「そしてまた、空室となる」
母のお腹のなか、家族で暮らした田舎の一軒家、初めての一人暮らし
はじめまして、さようなら
出会いと別れを繰り返して
ここはまた、空室となる
そんなお話
今回の文学フリマで初公開の新作です。
----------------------------------------
四肢を撫でた、柔らかな膜の記憶
押しては引く波のように
繰り返し呼ばれた名前
はやく知りたい
その声の所在地
はじめまして
熟した桃みたいな生まれたての頭
息を吹きかければ
飛んでいきそうな柔らかな産毛
何度もやさしくなぞられる命の輪郭
それから
見知らぬ誰かが残した歯形は
いつしか消えて
また浮かびあがって
そんな具合に脆かった
だからまたこの日が来たら
繰り返し名前を呼んで
また あなたにかえらせて