日本人の<青春>は無限に延長されたかのように思われた。が、現在の70代以上は青春どころではなく、また、恐るべきことに、闇バイトとパパ活の20代にも、往年の<青春>はないのである。現在、20世紀に<青春>と呼ばれた感覚は、1990年代に青春だった45歳前後が独占的に牽引していると私は思う。ザ・スミスの名曲をタイトルに、8〜90年代の名曲たちが各章の冒頭から鳴り始める、<音楽が体内に残っている以上は大人になれない>という<現代の青春>は、現実だけがどんどん重く辛くなっているようだ。ひょっとしたらこれは、人類が<青春>と呼ぶ情緒の形の、最後のものなのかもしれない。
菊地成孔(音楽家 / 文筆家)