紹介
この本は、2025年4月から7月までの間、渡邉康太郎とドミニク・チェンの二人が講師を務め、全4回で開催された flier book camp「わたし(たち)は出会いなおす―微かな記憶から意味を紡ぐワークショップ」に参加した26名によるエッセイ集です。
ワークショップ期間中、参加者たちは「出会いなおしたい記憶 」と向き合うために日誌を3ヶ月間書き続け、最後にその省察を行うエッセイを書き上げ、発表会で互いの文章を読み合いました。
その後、講師による校正、参加者による修正を経て、この一冊の本が出来上がりました。
ワークショップ「わたし(たち)は出会いなおす」案内文章
いま、世界は再び「強い物語」で覆われようとしていないでしょうか。個の存在の複雑さを排して、単純でわかりやすい世界の構造を再建しようとする力は、処理しきれない情報の荒波に抗うための生存本能なのかもしれません。しかし、わたしたちはこの世界をもっと豊穣で、多彩なものとして認識するために言葉を耕し、対話を重ねてきたはずです。
この会では、「強い物語」に飲み込まれてしまわないように、わたしたち一人ひとりの中で生起する「弱い物語」たちを編んでいきます。
日々の生活からこぼれ落ちてゆくささいな感情や記憶の数々は、わたしたちの存在を確かにかたちづくっているはずなのに、放っておけば消滅していきます。それでも、写真に撮ったり、文章で書き残したりしておくことによって、忘れないでおくこともできます。そうして日々、微かで儚い記憶たちを世話しているうちに、忙しない時間のなかでは気づくことのできなかった自分なりの意味が浮き上がってくる。
誰かに頼まれるわけでもなく、自らの経験と出会いなおすことの繰り返しを通して、わたしたちのものの見方はどのように変化するのでしょうか。
目次
はじめに 6
余白の旅 10
かたつむりの日々 20
痛みについて 30
ベンチプレス方丈記〜「強さ」をめぐる思索 40
揺らぎの中にあるもの 49
言葉がどうにも不器用で。 57
自由と制限と意志と私 67
文章に湿度を与える実験 80
出会いなおしに向けた「小さな表現」実験 91
やさしさはきっと離さない 101
マルチバース的ナラティブ考 115
解き放つ 126
境界にひらく 136
萌芽 148
競争しない速度で世界を追い越す 166
管理職が、仕事から距離を置いたことでみえたもの 176
AIドリブンダイエット 188
共存戦略のための適温探究記 198
問いは、はじまりを開く 208
書けないと思っていた人が今、残したいこと 218
感情を言葉にすることについて 228
名前のない自分 238
どろん 250
ふと、ピントを外して 262
誰かに届くかもしれない私のための言葉 274
となりの当事者性 286
おわりに 296