「言葉がなくちゃ、わかり合えないよ」
「そうかな? 試してみようか」
留学帰りの大学生・蓮司と、東南アジアから来た留学生・アンニョン。
明るく人懐っこい彼女との日々は、言葉と文化の違いを超えた、どこか不思議でやさしい時間だった。
だが、彼女の祖国をめぐる報道、交わらない言語、ふいにあふれる涙——
世界の「悲しみ」を他人事としてしか受け取れない自分に、蓮司は無力さと隔たりを感じていく。
本当に“分かり合う”とは、どういうことなのか。
理解できないまま、それでも誰かを愛することはできるのか。
静かに心を揺らす、言葉と共感、そして孤独についての物語。
作家・志兎鷺羅々亜が、二十代はじめに書き上げた初期短編を電子書籍化。