目立たなくても、報われなくても、
それでも世界をそっと整えている人がいる。
ドーナツ店で働く朝子は、店を清潔に保つことに喜びを見いだしていた。
しかし「売上にならない」と否定され、静かに心がすり減っていく。
市役所で働く沼田は、理想と現実の狭間で迷い、
“誰のための仕事か”を見失いかけていた。
商店街で三十年、ゴミを拾い続ける榊は、
誰にも気づかれない善意に、ついに挫けそうになる。
──その頃
人間世界を見守る“神々”もまた、失われていくやさしさに心を痛め、
このまま世界を見限るべきか、静かに語り合っていた。
三人は出会わない。
けれど、それぞれの小さな善意は、見えない糸となって誰かを動かしていく。
見返りのない行いは、無意味なのか。
神様でさえ迷うこの世界で、やさしさはどこまで届くのか。
見えないところで踏ん張る人々へ、そっと灯りをともす連作物語