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ジショカツ彙報 創刊号

  • 南1-2ホール | F-50 (評論・研究|出版)
  • じしょかついほう そうかんごう
  • 西練馬ほか
  • 書籍|A5
  • 128ページ
  • 1,500円
  • https://note.com/nishinerima/…
  • 2025/6/1(日)発行
  • 辞書を研究する論考から、辞書をテーマにした小説まで。 視点もアプローチも異なる8名の執筆陣が織りなす、〝辞書沼〟最前線を詰め込んだラインナップです。 ことばや文字の好きな方にぜひお届けしたい内容です。

    【『ジショカツ彙報 創刊号』目次】
     2 巻頭言 ――発刊の挨拶にかえて―― (西練馬)
     4 執筆者紹介
     7 学習国語辞書の立項と語釈の検証 ――児童小説に出現する語から―― (ながさわ)
     23 三「鷹」をめぐる冒険 ――「鷹」の略字についての言語景観―― (さわら)
     33 国語辞典の和製英語 どうなっている? (Miwa TEA)
     43 新しいことわざ辞典 (うさ学)
     57 なないろ (ハコサト)
     79 中国語辞書の歴史と中国語「辭書」「辭典」「詞典」の歴史 (Meme-Meme)
     93 国語辞典のかな見出しについて (オジマ)
     101 上から目線でブランチを語れ (西練馬)
    〔題字:ながまき〕

    ~~~本文より~~~

    巻頭言 ――発刊の挨拶にかえて――

    辞書を軸にした集まりなどを催していると、だんだんと仲間が増えてくる。異なるバックグラウンドを持つ友人たちとの会話はいつも刺激に溢れている。いずれみんなで雑誌でも作れたら楽しいだろう。漠然とそう思い描いていたものの、多忙を言い訳にして、月日の過ぎゆくに任せていた。 そうこうしているうちに〝辞書沼〟では新たな若い世代が躍動を始め、彼らはすばらしい勢いで成果をまとめあげているではないか。見る見るうちに活動を形にしてゆく青いエネルギーを前に、慌て、おののき、対抗心に火が点いた。こうしてはいられないと勢いで企画を立ち上げた。 本誌『ジショカツ彙報(いほう)』は、辞書に関する評論の進展を第一の目的とする。今や評論はどこでもできるかもしれない。そうであっても、締め切りという圧力が必要だと常々感じていた。日ごろインプットしてはいるけれど整理やアウトプットが叶わず積んだままの思考がたくさんある。必要なのは発表のきっかけだ。そこで本企画は、発行日時が物理的に決まる、紙の同人誌という体裁が選ばれた。

    語らせたいと思う友人に声をかけ、本誌には8 名の多彩なメンバーが揃った。参加を快諾し、忙しい合間を縫って寄稿してくれた執筆陣に感謝する。おかげで本誌は、辞書や業界の情況を調査したもの、辞書に入りきらないことばの実際を報告したもの、そして小説に至るまで、広汎な内容となった。掲載順に簡単に紹介する。

    ながさわ氏は、子供向けの国語辞書を使って子供は本が読めるのかという、実践的かつクリティカルなテーマについて評論している。単なる印象論によらず、ロングセラー作品を基盤に置いて複数の辞書を比較検討するという実証的な方法で、説得力あるバランスのとれた議論を展開する。

    さわら氏は、「鷹」の略字というニッチなテーマを論じる。一見狭い話題のようでありながら、辞書をはじめとする文献の調査やSNS 及び現地の踏査まで網羅しており、情報量と話題の広さに圧倒される。エッセイの軽やかな風味とともに漢字文化の深みがたっぷりと味わえる。

    Miwa TEA 氏は、国語辞書での和製英語の現状を調べ、扱い方に疑問を投げかける。和製英語というカテゴリーの性質を概観し、その様々な側面を整理する中で、辞書の和製英語の記述に付きまとう問題点がおのずと浮かび上がるよう、見通しのよい議論を提供している。

    うさ学氏は、長年にわたり蓄積してきた「新しいことわざ」の研究結果を、辞書の体裁で寄稿してくれた。幅広い調査に裏打ちされた関連情報とともに、まだ辞書に捕捉されていない表現が多数紹介され、読み進めるごとに膝を打つことうけあいの「読む辞書」になっている。

    ハコサト氏は、国語辞書をテーマにした楽しいSF 作品を寄せてくれた。まさかの小説作品は、本誌のラインナップ中では異端の形態でありつつも、間違いなく現代の辞書を評論するくさびの最先端と言ってよく、そのエッジは鋭い。ちりばめられた辞書界隈の小ネタも見逃せない。

    Meme-Meme 氏は、中国語での「辞書」に当たる語の扱いという知られざる領域を丹念に分析する。辞書の学会があり、基本的な用語の定義から議論されているという中国の環境はうらやむべきところがある。辞書(学)に関して欧米以外の事情を示す文献は少なく、貴重な報告である。

    オジマ氏は、「かな見出し」という、国語辞書の抱える古くて新しい問題に切り込んだ。辞書の作り手にも使い手にも当然視されがちな「かな見出し」だが、それが何を表現しているのか、どうやって情報を盛り込んでいるのかといった点に課題が潜んでいることを指摘する。

    西練馬は、国語辞書に不可欠な仕組みであるブランチ(語釈の区分)を、改めて考え直した。多数の観点への言及と文献の引用による内容の発散をいとわなかったため、本誌最長の記事となった。間欠的に言及されてきた議論の、今後への結節点となれば幸いである。 最後になったが、題字はながまき氏の最新作である。表紙を飛び出さんばかりの文字の力で、堅くなりがちな評論誌の入口に彩りを添え、門戸を広げてくれた。

    本誌の題号『ジショカツ彙報』について一言しておきたい。「ジショ」はもちろん「辞書」を表す。「カツ」は、とみに見聞きする「○活」の「活=活動」のことか、あるいは「勝つ」か、「活(を入れる)」か、「且つ」か、何なら「カツレツ」かもしれない。「彙報」は「報告を集めたもの」の意である。現在では学会誌の巻末などで通信欄の名前にみられる語だが、古くは研究報告書などの題名にもなっていた。活動を報告する誌名になりそうで、かつ定期刊行物の雰囲気がある語を選んだ。
    本誌は継続的な発行を意図している。私たちの新たな活動を切り開く『ジショカツ彙報』の、まずは第一号をここにお送りする。

    『ジショカツ彙報』編集・制作 西練馬
    2025年5月吉日

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