滅び・風・旅がテーマの連作短編ファンタジー。
イタリア〜中欧あたりのにおいがする世界を舞台に、
異なる時代の人々をえがきます。
「ホーフレアにて」「冬をこえて」はカクヨムにて全文試し読みできます。
※終売予定と取り置きについて※
在庫が残り10部未満となり、増刷せずに終売とする予定です。
文フリ東京41では、会場に全数は持ち込まず、残りは次のイベントや通販にとっておく予定です。取り置きも随時受付中なので、ご希望の方はX(旧Twitter)のDMやメールなどでご連絡ください。
万が一、在庫と同じ数の取り置き依頼を頂いた場合は、その時点で終売となります。状況はXやブログの出店告知記事でお知らせ予定です。
【収録作品】
「ホーフレアにて」 山間の町にやって来たヨアン。深い緑の瞳をもつリッケと出会うが……
リッケはくすりと笑い、ヨアンの顔をのぞき込んだ。あまりにもまっすぐリッケの眼差しが刺さってきて、ヨアンは少しどきりとした。「だったらまた会おうよ。あの橋にいるから、いつでも来て。ね?」
「冬をこえて」 疫病に村を襲われ家族を失ったルーカは、“魔法使い”と呼ばれる隠者の噂を聞いた。
その人は琥珀色の瞳でじっとルーカを見た。えぐるように鋭く、それでいてゆっくり手探りをするような眼差しは、彼に村近くの林で見た蛇を思い出させた。「晩夏の手向け」 剣士のゾントと楽師のビノエ、兄弟が出会った過去と幻。
ビノエが〈歌ふいご〉の蛇腹を押さえる留め具を外し、枠の帯に手を通した。耳を澄ませ、息を吸い、目を遊ばせる。満ち満ちた緑と失われかけた日々の名残りが、確かに彼に応えたようだった。「星影の標」 古に紡がれた聖なる言葉を探し、ミシュカは小さな旅に出る。
「いま仰ぎます、いとも麗しき天地の母よ。命の環に微笑みを、栄えの歌に口づけを」
頭の中でゆっくりとなぞった言葉が、輝き、天へ昇るのを思い浮かべる。最後の一つが瞬いて消えるのを見届け、ミシュカは男に髪の房を返した。「春へゆく風」 薬を売って旅をするメアリアと先生はサンゲルジュという町に着く。
葡萄色の衣は人の目をよくひいた。後ろから声をかけてきたり、先生を認めるなり寄ってくる客も少なくない。竪琴を抱えた楽師はあかぎれに効く膏薬を求め、酒場から出てきた歌い手は喉を潤す蜜を買ってゆく。