かつて東京都目黒区の東京大学駒場キャンパスに、駒場寮という学生寮が存在した。1935年(昭和10年)竣工。設計は内田祥三。廃寮・取り壊しをめぐり、大学側と寮生が高裁まで争う事態となったが、2001年8月22日、強制執行によりその歴史に幕を閉じた。
2001年5月、大学4年生だった私は、友人を訪ねて東大に行った時、偶然に駒場寮を発見した。渋谷駅から少し歩いただけで、このような森があり、蔦が絡まる古い建物があるということは、当時の私には衝撃的だった。また、建物の中も、住居であると同時にサークル部屋などもあり、様々な人が集まり、多目的に使われている、混沌とした空間であった。駒場寮は、学生によって運営されている自治寮で、1部屋約24畳の広大な部屋を、それぞれ自由な使い方をしていて、暮らし方も面白いと思った。
私は、その緑に囲まれた古い建物に、圧倒的な魅力を感じ、この駒場寮に住んでいる人の写真&インタビュー集を作ることを卒業制作にすることに決めた。写真を撮り、編集し、卒業制作展で展示をした。そのために、2001年の夏休みは、主に駒場寮で写真を撮って過ごすこととなった。
この写真集は、2015年に制作した写真集「2001年の夏休み」の再編集版となる。今回は、17年前の夏に撮影した1000枚以上の写真の中から、前回の写真集に収録した写真に加え、「タテカン」「駒場寮存続運動」の要素を追加し再編集した。2018年11月上旬現在、東大駒場寮と同じく学生自治寮である京都大学の吉田寮で、かつての駒場寮と同様に、寮存続をめぐって大学側と寮生が対立している。京大ではタテカン(立て看板)を巡っても対立が起きているようである。そこで今回の写真集では、「2001年夏頃、東大にはどういうタテカンがあったのか」を追加し、あわせて少し「運動」の写真も追加した。
偶然にも、前回の写真集を出したのと同時期に、駒場寮の約70年の長い歴史、出身者についてもまとめた書籍「東大駒場寮物語」(KADOKAWA)が出版された。著者は第132期の寮委員長である松本博文さん。Webサービス「cakes」でも少し読むことができるので、この写真集で駒場寮に興味を持った方は読んでみてほしい。
https://cakes.mu/series/3557
2018年11月 大薄 朋子 Tomoko Oosuki