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虚構のプリクエル

  • 南1-2ホール | A-27〜28 (小説|SF)
  • きょこうのぷりくえる
  • 久納 一湖
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 162ページ
  • 1,000円
  • 2024/1/4(木)発行

  • 【この二人には、 今、突破できない壁がある…】

    アンドロイドと戦うチームの活躍と日常を描く、虚構傀儡の女王へつづく物語。

    team hattari隠れた名作。

    【story】

    オートマタとの共存が当たり前の近未来都市メトロシティ。違法製造された危険なオートマタと戦う黒澤は、簡単なはずの案件で未知の存在であるアンドロイドと遭遇し、メトロシティを脅かす問題に巻き込まれていく。

    同僚の高見佳奈、オートマタと関連を持つエルリの三人体勢チーム"ガレージ"はこの脅威に打ち勝てるのか。

    表題の『虚構のプリクエル』に加え、2本の書き下ろしを収録。『職場に好きな人がいると仕事が捗るアレ』、本編(スティール・ライフ)の主人公の10代を書いた『水溶性の鉄拳』も必読ストーリー!

    【keyword】

    近未来/微レトロ/悩める30代/オートマタ/アンドロイド

    がんばるメンズ/元気女子/得体のしれない敵/剛腕ファザコン/荒廃的/ドライな人間関係/


    【抜粋】

    ニュースが次の話題に切り替わった所で、高見はモニタを消した。運転席に身体を預けて背伸びする。フロントガラスがだいぶ濡れていたので、一度ワイパーで拭った。

     違法オートマタが減った次は、自社製品の迷子騒動か……。  笠原工業が警備・医療や家庭用の、いわゆる正規オートマタの他、違法オートマタも製造していた事実は、当然一般には知られていない。違法というのは文字通り、違法に改造やモデルアップされた機体で、これは笠原工業が秘密裏に軍需産業に介入しようとしていたことに所以する。その計画の一部で生み出されたデザイナーベイビーという素材にも高見たちは会ったことがある。その一人は今は仕事を引退し、また一人は北の狭間と呼ばれる異国へ渡り、もう一人は自分のガレージに居候している。そう考えると奇妙だな、と彼女は思った。

    「世の中、いろいろあるんですねぇ……」  

    そう独り言をぼやいていると、同僚から「部屋の前に着いた」と通信が入る。黒澤当麻だ。声色は低い。今日の案件があまり気に入らなかったようだが、自分たちで対応できる内容がこれしかなかったのだから仕方ない。実のところ彼女自身もあまり乗り気ではなかった。しかし、乗り気でない作業をこなすから仕事なのであって、その対価として報酬を得ているのだから文句はなかった。黒澤も同じだろう。それに、少しでも稼がなければ。

    「よぉし。今日も一日、がんばりますか」  

    高見はまた独り言を呟いて、通信をオンにする。ツナギの袖を捲ると、彼女は車の窓から相棒の居る現場を見上げた。

    「高見さん、これはどう考えても、俺たちでなくて警備隊の仕事だと思うんだが」  

    古びたモーテルの一室の前で、黒澤は苦言を漏らした。生憎の空模様で霧雨が降っている。それが自分の黒髪とブルゾンを湿らせていることが不快だった。二階から管理室の様子を窺うと、気弱そうな女が窓越しにこちらを見上げていたが、自分の視線に気づくと直ぐに奥へ姿を消した。こんな頼りなさそうな男が来たことに落胆したような顔だったが、よくあることなので彼は気にしなかった。

     黒澤が年の割に若く見えるのは、小柄な体格のせいだが、丸くて大きな瞳がそれを助長させていた。実年齢は三十半ばに差し掛かっているにも関わらず、未だに学生に間違われることもある。誰が見ても、彼がオートマタを相手にできるとは思わないだろう。


    収録

    ・虚構のプリクエル

    ・職場に好きな人がいると仕事が捗るアレ(書き下ろし)

    ・水溶性の鉄拳(書き下ろし)


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