SFシリーズ①【魅力的なキャラクターに出会う】
出生にワケありな主人公の葛藤と戦いを描くSFアクション。
team hattari人気作。
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舞台は近未来の都市メトロシティ。違法に製造されたオートマタと戦う主人公らのサイドストーリーをまとめた、書き下ろし1作含む計4話を時系列順に収録。
ハードボイルド、
サイバーパンクでありつつ退廃的な
世界観になっています。
人生の
葛藤あり、人間関係の
イザコザあり、
バトルありの3拍子揃ったSFアクション小説。
※流血描写あり
--収録-------
主人公と相棒の出会い『ファーストコンタクト』
最悪の仕事と面倒な女『ハードボイルドセレナーデ』(書き下ろし)
同僚の過去話『フクロウは迫りくる黄昏に飛び立つ』
主人公のフカボリ『余談ですが彼について私はこう思う』
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表紙の主人公が再び活躍するお話が文学フリマ東京40に新刊として登場!お楽しみに。
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【読者様からいただいた感想】抜粋
・言葉がぜんぶ綺麗で、
読み進めるのが心地よいです。
・近未来ですが、古びた木造建築やラジオ、ボウガンなど
所々レトロなアイテムが登場するところもツボでした。 戦闘シーンも臨場感があって泥臭く、
カッコ良かったです。
・最後のお話のような、
人物同士のプライベートな生活の会話がアクションと共に織り込まれているのも素敵でした。
・
近未来なのにレトロ感+退廃的なのが新しい
・
主人公が人間くさくてよい ・武闘派、頭脳派みたいにポジションが分れてるから
キャラの個性があっていい ・チームの絡みが、見ていておもしろい
など。ありがとうございました。
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作:久納一湖、イラスト:ハルサカ様
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【抜粋】
「それでなんでこんなことになったと思う?」
彼は苛立っていた。プランにない状況だからだ。通信先からすぐに返事が来る。あちらは冷静な声色だった。
『日頃の行いのせいだろうな』
乾いた声でそう言い放つ相手を一旦無視しつつ、男は、伊野田は目の前の問題に向き直る。ひとまず切り抜けなければ相手に直接文句も言えない。
(まったく、なんで人間の方に追われるハメになったんだ……?)
馴染みのない街を駆けている間、路地に迷い込んでしまった。いくらナビ役がいたとしても、古い街にはいくらでも抜け道が存在する。伊野田は簡単に袋小路に追いやられてしまった。相手が人間だと、どうにもこうにもうまく事が運ばない。だが、人気の無い場所に来られたほうがこちらにとっても好都合だった。人前で堂々とこなせる仕事ではない。
彼は意を決して振り返る。レンガの道を走って来る複数の足音が、角を曲がる。通信の相手が早口で告げてくる。近くに身を潜めているようだが、あちらもそれほど余裕はないらしい。
『そこは封鎖されてる』
「んなもん、見りゃわかるよ。後でプランについて話し合う必要があるな」
『さっきも言ったけどな、日頃の行いのせいだろう』
「ちょっと黙ってて。今、集中してるから」
彼は咳ばらいをした。集中のつもりだろう。
『集中? まさかおまえ、また待機中に酒飲んでたのか?』
「あんなの飲んだうちに入らないって」
『大丈夫なのか。前みたいに吐くなよ』
小言を交わしている間にも、伊野田を追ってきた足音がじわじわとこちらへ距離を詰めてくる。人間を相手にするなら、いつも以上に慎重にならねばならない。たとえ相手が訓練のされていない一般人であろうとも。たとえ多少、自分に酒が回っていたとしても。
相手は二人。三人だと思ったので少し胸をなで下ろす。自分よりも大柄な男が一人。そして封鎖されている金網を押し開き、小柄な男が姿を見せる。小柄な方は鉄パイプを掴んでいた。遠目からでも手に力が入っているのがわかる。挟み撃ちに合い、思わず舌打ちをする。
(ハードボイルトセレナーデ より)