C1講義室の2016年文学フリマデビュー作から2018年までの作品を集めた総集編です。
各6作品ずつ12作品収録!
総集編もリバーシブル表紙!
※収録作品『ゆたにたゆたに半透明』がこちらからお試しでお読みいただけます。
https://kakuyomu.jp/works/16817330666584964043 小島宇良作品
『夏野菜/奇談』 就職活動に失敗した大学四年生の中田青年は、新宿にて奇怪な店を見つける。 そこは、怪しくも美しい人形たちの館だった。中田青年はそこで、一際異彩を放つ人形と出会う。 人形との共同生活を始めた矢先、隣の部屋に野菜好きの少女が引っ越してくる。 そして青年は人形の夢を見る――。
『災禍』心が壊れる音がした。
やがて、色さえも消えていった――
西野梢は貧しい家庭に生まれ育ったことを除けばごく普通の女子高生。
変化の少ない日々を生きていた梢の前に、万引き未遂を引き起こしたクラスメイトの春日秋が現れる。
似た者同士の秋に梢が心を開いていく最中、母に引き合わされた男――
佐護唯は、人間の皮を被った獣だった。
何もかも奪われた梢は、秋とともに『抹消計画』を練り始める。
『裏通りの魔人街』どこか懐かしい、知らない街。
人間が一人もいない街。
その火、関東一体で大地震が起きた。
東京の下町で育つ黒猫の『私』は母とともに阿鼻叫喚の最中を逃げ惑うが、途中ではぐれてしまう。破壊しつくされた街で母を探すうち、奇妙な門を見つける。
その門の向こう側には人知では推し量れないもの共が跋扈していた。
『私』は母を探すため、魔人街へと足を踏み入れる。
『地下鉄東西線爆破檸檬』東西線を爆破したい全ての勤め人に捧ぐ。
会社なんぞにゃ行きたくない
しかし行かねば生きれない
鬱々窮屈、悪名高き東西線
いっそ爆発してしまえ
そうすりゃすっきり粉微塵
思うだけなら罪も無し
思うだけなら是非も無し
それで満足できぬなら――
鞄に檸檬を仕込みませう
『探検部の花子さん』幽霊より、友達作りが大事だ。
アウトサイド・ソサエティ。それは彼らのこと。
緒方鈴音は大学サークル・探検部で出会った幽霊を花子さんと呼んだ。
彼女は本当の名前を教えてくれない。気ままに表れ、話、消えるだけ。
花子さんは鈴音にとっての良き理解者となり、大学生活は順風満帆。
そのはずだった。
少し悲しい花子さん『出会い』編
『セファイドの残光』
誰も明日の私を覚えていない――
一匹を除いて。
半年間、外堀を埋め続けた。
大学卒業間際の中田青年は、後輩の田村岬と念願のシーパラダイスデートをすることに。
しかし、永遠にその日は巡ってこない。
飼い猫のくまだけが、彼のことを覚えていてくれるのだ――。
たとえ時空間がへちゃむくれても、猫の体温は温かい。一人と
一匹の時間遡行の物語。
雨下雫作品
『変針』
鬱々とした通勤風景に埋もれる日々を送る私。
しかし、ある冬の朝の事こと、品川駅のホームで偶然出会ったかつての幼馴染明香里さんに誘われて、私は失踪を決意する。
「キミは、どこへだって行ける」
彼女の言葉に導かれ、私はどこへ向かうのか――。
『偽付喪神夜行絵巻縁起』無価値なガラクタは付喪神になりたいと願った。
無価値なガラクタばかりをあつめた九十九古物店。
店内で私は一巻の絵巻物を見つける。
絵巻の端に佇む一体の付喪神に魅入られた私は、店主のツクモ先生と先生と同居する謎の美女、フシミさんとの奇妙な関係に巻き込まれていく。
価値を拒絶し続ける先生の本心に触れたとき、私は偽付喪神縁起の物語を知ることになる。
『不連続線上のカナタ』〈存在〉が現れては消えてしまう
不思議な体質の少女、〈カナタ〉
カナタの存在は現れたり、消えたりを繰り返す。
カナタが時々消えてしまう世界を唯一、僕だけが知っていた。
存在の明滅を繰り返すたび、変わりゆくカナタ。
そんなカナタに振り回されながら、僕は彼女に惹かれていく。
とぎれとぎれの影を追いかけた果て。
僕らの間に重大な秘密が隠されていたことなど、何も知らずに。
『ゆたにたゆたに半透明』月の明かりに真砂が煌めいた夜はね、海月が浜に恋をするのさ。
家族に黙って仕事を辞め、通勤するフリを始めた私は失踪していた大学の先輩マサゴさんと再会する。
「浮遊霊ごっこだとおもえば案外に楽しいもんさ」と悠長に構えているマサゴさんとの不思議な夏の日々。
居場所もない、未来も見えない、前を向く勇気もない。
私は流されるままどこへ向かうのか。
何者にもなれない、半端者たちの漂流記。
『春よりつめたく、小春よりあたたかな』またきっと同じ夢を見る
夜寒の中、ヤケ酒の果てに黄金町で行き倒れた私が目を覚ますと、そこは〈ちょんの間〉だった。
私はそこで奇妙な言動を繰り返す謎の女、小春と出会う。
かみ合わない言葉、混じり合うことのない視点。
そんなちぐはぐなやりとりに私はなぜか惹かれていき、小春は私の指先から滴る血を求めた。
私はどこから夢を見ていたのか。なにもかもあやふやなある小春日の物語。
『鈴ヶ森ノスタルジー』その朝、私は炎を見た。
通勤電車の車窓に炎を見た私は、鈴ヶ森刑場跡の前に立っていた。
刑場跡で出会った隻腕の女、オカさんを追いかけた末に私は〈読まれることを拒絶する文字〉に囲まれた奇妙な世界で暮らし始める。
元の世界で味わうことのできなかった自由が満ちた世界。
しかし、本当に迷い込んだ異世界は自由な世界なのか。
そして、私が見た炎とは何だったのだろうか――。
いつか私が暮らしたある冬の物語。