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くわしくは文学フリマ東京37公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

【コピー本】30日の小さな物語たち

  • 第二展示場 Eホール | お-57 (小説|ファンタジー・幻想文学)
  • 30にちのちいさなものがたりたち
  • 永坂暖日
  • 書籍|その他
  • 100円
  • 2022/11/20(日)発行
  • Twitterの企画#novelber2021のお題をお借りして書いた掌編集です。
    コピー本です。

    ※試し読みにどうぞ。
    Day1 鍵
    「はなむけだ。持っていくがいい」
      手渡されたのは、一本の鍵。覚えているのは、その言葉と共に渡されたことと、この鍵は大事なものだ、ということだけ。
      けれど、渡してくれた人の顔も声も、思い出せない。この鍵がどこの鍵かも、忘れてしまった。
      たぶん扉を開けるための、古い鍵。その鍵を握りしめ、街から街を渡り歩いている。
      忘れてしまったのは、これがどこの鍵か、だけではない。色々なことを忘れてしまった。自分の名も。
      なくしたすべてがそこにあると信じて、今日も鍵穴に鍵をさしている。

    Day2 屋上
    「イイトコロに連れてってあげる」
      いたずらっぽい笑みが案内する先は、絶対にイイトコロではない。経験上それが分かっているのに、ため息混じりについて行く。
     「ここだよ」
      ほらやっぱり。立ち入り禁止の屋上だ。
     「鍵、壊れてんの。先生達も気付いてないんだよ」
      きしむ音の向こうには、雲まで赤く染まる空が広がっていた。吸い込まれるように屋上に出ていた。
     「綺麗でしょ、禁断の夕日」
      悔しいけれど言い返せない。
      立ち入ってはいけない場所で一緒に眺める夕焼けは、昨日までとは全然違って見えた。

    Day3 かぼちゃ
     シンデレラの物語の中で一番に憧れたのは、カボチャの馬車だった。カボチャを馬車にする魔法使いの独創性、すばらしい。
     「発想的に、お盆のキュウリやナスも似たようなもんじゃない?」
      幼なじみのアバターは呆れた顔をしてみせる。
      ちがう、そうじゃない。いや、そんなにちがくはないかもしれないけど、とにかくわたしは、カボチャの馬車に乗ってみたいのだ。
      呆れながらも、幼なじみはどこまでも付き合ってくれる。
      ナスとキュウリが牽くカボチャの馬車は、わたし達を乗せて屋上を飛び立ち、仮想空間の空へ駆け上っていく。

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