こちらのアイテムは2023/11/11(土)開催・文学フリマ東京37にて入手できます。
くわしくは文学フリマ東京37公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

へにゃぽ

  • 第一展示場 | O-37〜38 (小説|短編・掌編・ショートショート)
  • へにゃぽ
  • へにゃらぽっちぽー
  • 書籍|A5
  • 92ページ
  • 200円
  • https://twitter.com/Henyarapo…
  • 2020/4/28(火)発行
  • へにゃぽちゃんは道に迷っています。へにゃらぽっちぽー兄さんはうろうろとしています。ゆかいです。
    はじめてへにゃらぽっちぽーにふれる方も、へにゃらぽっちぽーに詳しい方も、表紙から巻末まで堪能していただければ幸いです。


            目次

    だいこん会社            5

    へにゃらぽっちぽー駅        24

    老舗                30

    美術館               50

    化石                63

    おいしい地図            71




         ~試し読みをどうぞ~


     へにゃらぽっちぽー駅

     

     へにゃらぽっちぽー兄さんは新幹線から降りました。ここはどこですか。

    「駅です」

     なんですかそれは。

    「のりものがやってくるのです」

    「べんりです」

     駅では新幹線や特急、いろいろな色やかたちの列車に乗ることができます。地下鉄やモノレール、路面電車、バスやタクシーといった方々もいらっしゃいます。たのしいですね。

    「ぽっちぽ! へにゃらぽっちぽー!」

     駅とはすばらしいものです。おいしい駅弁を食べながら列車を眺めて、へにゃらぽっちぽー兄さんは感激しております。

     

     

     駅を作りましょう。せっかくなのでみはらしのよいところがいいなあ。

    《へにゃらぽっちぽー駅》

     看板をたてれば完成です。

     へにゃらぽっちぽー駅は山です。森を抜けておおきな岩に登りますと、広々とした空と遠くの街がみえます。斜面を降りると、水がしぶきを上げている渓流があります。吹きぬける風は、からりとしてきもちのよいものです。

     このすばらしい駅へ来ていただきましょう。のりもののひとたちを招待しました。

     

    「線路がないといけません」

     おことわりの手紙が届いております。

    「滝を登っていくのはちょっと……」

     船のひとも来れないようです。

    「たいらなところに着陸したいです」

     飛行機のひともご都合がよろしくありません。

    「ちょっといま、でかけているのでむずかしいですね」

     ロケットのひとはけっこう遠くにいます。

    「駅は動けないのです」

     駅さんにも断られてしまいました。

     へにゃらぽっちぽー兄さんが招待状を送りつけたひとたちはだれもやってきません。「ぽぽぽ……」と岩に座ってぼんやりしていると、シカのひとやサルのひとが近づいてきます。リスのひともいます。こんにちは。

     この方々はのりものでしょうか。とりあえずシカさんにまたがるへにゃらぽっちぽー兄さんです。よっこらせ。りっぱな角ですね。

     

    「にゃぽ……へにゃぽ……」

     へにゃぽちゃんがやってきました。

    「にゃぽ……にゃぽ……」

     山登りは疲れてしまいます。この駅はすこしアクセスが悪いです。

    「ぽっちぽ! ぽっちぽ! へにゃらぽっちぽー!」

     へにゃぽちゃんが来てくれてよろこぶへにゃらぽっちぽー兄さんです。どうぞ存分にへにゃらぽっちぽー駅を満喫してください。

    「へにゃぽ……」

     そういわれてもどうすればよいのでしょう。サルさんやリスさんやウサギさんに乗るわけにもいきません。そしてなぜへにゃらぽっちぽー兄さんはシカさんの角をみがいているのでしょうか。

    「にゃぽぽ……、にゃぽ、にゃぽ」

     とりあえず景色を眺めることにしました。ふもとの道路がちいさくみえます。ずいぶんと歩いてきたのだなあ。

     

    「ぽ!」

     シカさんから降りたへにゃらぽっちぽー兄さんが、なにかをさしだしてきます。

    「ぽぽ!」

     おおきな葉っぱが折りたたまれています。これを開けばよいのですか。

    「ぽっちぽ! ぽっちぽ!」

     誇らしげに胸を張っています。

     葉っぱのなかには、あしもとに生えていたきのこや、あたまの上から落ちてきた栗が包まれていました。へにゃらぽっちぽー兄さんにはイガが刺さっています。ざんしんなファッションですね。

    「ぽぽぽー!」

     これは駅弁だそうです。駅に来たひとにお弁当をさしあげて、おもてなしをします。

    「へにゃぽ! にゃぽ……にゃぽ……」

     ありがとうございます。そのまま食べたらおなかがいたくなりそうですので、ありがたくもちかえることにしました。

     

     青空を背景に、蝶のひとがひらひらと鳥のひとはすいすいと、きもちよさそうに飛んでいます。しかし、へにゃぽちゃんは歩いて帰らないといけません。「へにゃぽ!」と気合を入れて、ふもとに向かいましょう。

    「乗っていきませんかー」

     上から声がします。

    「きもちがいいですよー」

     気球がへにゃらぽっちぽー兄さんのあたまに着陸しました。

    「へにゃぽ! へにゃぽ!」

     兄さんによじ登って乗りこみます。よっこいせ。どうやら帰りはのんびりとできそうです。風に吹かれて下山します。

    「ぽぽぽー!」

     あたまからぷかぷかと浮かび上がっていく気球さんを、おみおくりするへにゃらぽっちぽー兄さんです。

    「ぽっちぽ! ぽっちぽ! へにゃらぽっちぽー!」

     気球はのりものです。のりものは駅から出発するのです。へにゃらぽっちぽー兄さんはへにゃらぽっちぽー駅になりました。

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