こちらのアイテムは2022/11/20(日)開催・文学フリマ東京35にて入手できます。
くわしくは文学フリマ東京35公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

鏡のなかに魔女を見つけた

  • 第一展示場 | B-03 (小説|純文学)
  • かがみのなかにまじょをみつけた
  • 大藤凛
  • 書籍|B6
  • 90ページ
  • 800円
  • 2022/9/4(日)発行
  • 魔力を受け継ぐことができなかった魔女志望の少女と、憧れの魔女のお話。
    ふたりは出会い、魔力の正体、互いの運命に気づいてゆく。

    (サンプル)

     正面玄関にある楕円の大鏡のくすみは、いくら拭いてもぜんぜん落ちてくれなかった。
     バケツに汲んだ水はまだまだ綺麗なままだし、なぞってみても指先にあたる感覚はつるつるしていて、ひんやりと気持ちいい。これは本当に汚れなんだろうか。
     はぁ、と息を吹きかけてみる。
     ぼんやりとかすんだ自分の顔が、とても惨めに見えた。
     ちょうどあたしの顔の高さにある、太くて浅いひっかき傷のような、よくみると細かな線が集まってできたくすみ。誰もこの鏡を見ることはないから、先生だって気づいていないみたいだ。誰もここで足をとめはしない。誰にも見られることのない、鏡としては用をなしていないこれを、けれどあたしは磨かなければいけない。なにがなんでも、ピカピカに磨き上げなければ。それが仕事なのだから。
     週末に迫った年に一度の収穫祭。今日もその練習日で、みんな夜明けからパレードの練習に駆り出されていた。あたしはといえば、みんなが出かけてから、前日に済ませられなかった校舎の掃除をしていた。今日はこのあと庭園の木の手入れをすることになっている。木といっても、そこらの人家の庭に植えられている木なんて目ではない。太い幹をもつ、おおきな白樺の木。それも数えきれないくらいたくさん。
     朝陽の粒が揺れる窓の外には、面倒くささが広がっている。
     ちらりとそれらに目をやった、そのとき--

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