こちらのアイテムは2020/11/22(日)開催・第三十一回文学フリマ東京にて入手できます。
くわしくは第三十一回文学フリマ東京公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

放課後の彼女

  • エ-39 (小説|純文学)→配置図(eventmesh)
  • ほうかごのかのじょ
  • 小野木のあ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 300円
  • 電子書籍「青空の月」。
    そのインスパイアストーリー「放課後の彼女」「面談の部屋」を収録した
    文学フリーマーケット東京用に書かれた「放課後の彼女」。
    そして、2020年緊急事態宣言下で書かれた(描かれた)問題作??
    「自粛のお供に林檎デッサン」も特別収録。
    表紙は、ふむふむふともくもくのこと「星屑の香り」


    「放課後の彼女」

     父親の転勤で引っ越しをすることになり、ユリナが転校生としてS小学校に通い始めたのは四年生の春のことだった。田舎から田舎への引っ越しで町の規模はそれほど変わらず、小学校の校舎の大きさも生徒数も前の学校とだいたい同じくらいだった。それでもユリナは新しい生活への期待に胸を躍らせていた。新しい家、新しい学校、新しい友達。転校生になるということも、なんだか自分が少し特別な存在になるような気がしてドキドキしていた。

     転校生生活は、とても順調なスタートを切った。保育園からずっと同じメンバーだというクラスメイトたちは、珍しがってユリナの周りに集まってはあれこれと質問攻めにした。家が近所の子が何人かいることが分かり、放課後は毎日集まって遊ぶようになった。近所でない子が自転車でやってくることもあった。町のことを何も知らないユリナを、みんなが競うように案内して回った。お小遣いでお菓子が買えるスーパーや駄菓子屋の場所。ボール遊びが出来る公園。遊具で遊びたいときは、少し遠くのアスレチックがある公園まで自転車で行くこと。町民なら誰でも利用できる図書館。お互いの家を行き来して遊ぶ友達もできた。転校して一年が経つ頃には、ユリナは自分もすっかり町の子供になったような気持ちになっていた。

      平和だった学校生活がおかしくなったのは、五年生に進級してしばらく経った頃のことだった。ある日の朝、下駄箱のところで仲良しの友達を見つけて、おはようと声をかけた。確かに目が合ったはずなのに、その子は返事をせずに教室のほうへ走って行ってしまった。その後姿を見ながら、ユリナは強烈に嫌な予感を感じていた。おそるおそる教室へ入り、さっきとは別の友達の輪に話しかけようと近づくと、ユリナに気づいた瞬間にその子たちは教室を出て行ってしまった。そしてその直後、廊下から甲高い笑い声が響いてきた。その日一日、なんとかして誰かに話しかけようとしたユリナの努力はすべて徒労に終わった。誰もユリナの方を見ないし、うっかり目が合いそうになると慌てて顔をそらされ、近づけば逃げられる。

     ユリナにはさっぱり訳が分からなかった。誰でもいいから、なぜこんなことをするのか理由を教えてほしいと思ったが、それは叶わなかった。その日始まった悪夢は、次の日も、その次の日も覚めることなく続いた。我慢していれば、そのうち収まるかもしれないという淡い期待は裏切られ続け、誰にも話しかけずに一人でいればいるほど、ユリナは透明になって見えなくなっていくかのようだった。

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