2019年11月に開催された綺想編纂館(朧)@Fictionarys様の企画「Novelber2019」への寄稿作30話のうち、11話を自選し、相応に加筆修正したうえで文庫化したものです。
すこしせつないセピア色の写真めいた話が多めの、おとな向けのビターなクッキーアソートのような短編集。
【収録タイトル+冒頭公開】
○窓辺の薔薇
──真っ白な一輪挿しが出窓の台にことり、と触れた。
○恋文の不思議
──天窓越しに鈍い月光の届く蔵の、いっとう奥の暗がりにある、いくつもの小引き出しに仕切られた黒漆塗りの箪笥。
○あまき夢のトパーズ(キャラクター原案 R・U)
──「トパーズとラバーズって語感が似てますよね。そう思いません、近衛?」
○当日券
──「当日券有リマス」
○千草散りゆく
──あの病院、と女たちのひそひそ囁く声がした。
○綴じたポケット
──あとはこのクロゼットだけか。
○編み込みの藍
──出藍の誉れ。そうお客様の前で父があなたを褒めてらしたのを、お茶を換えにきたわたしまで、なんだか誇らしい気持ちで聞いていました。
○初霜の朝
────そろそろ潮時なのかも知れない。
○Blur
──吐息にじむTwilight 君のいないsight
○ぬくもりの記憶
────ああ、いらっしゃいませ。だいぶ外も寒くなりましたね、すっかり冷えてしまったでしょう……
○冬の足音
──日に日に、つんとつめたく、空気が澄んでいく。
選抜基準は単純に、書いた当人が特に自分の「好き!」を込めて書いた話です。
「一福千遥」という書き手の雰囲気を知っていただくのに最適なガイドの役割も担っている一冊です。