【もう少しだけ軽やかに、もう少しだけ緩やかに。】
【個人連載雑誌 / 第三号 / A5 / オンデマンドフルカラー表紙 / 74P】
※残2部。完売後の増刷は行いません。
少部数のため、取り置き希望の方はtwitter(@feelingskyblue)までお知らせください。『walking postcard』は、呼吸書房が2018年11月から発行している小さな雑誌です。
書き手はひとまず私ひとり。一冊の本にまとまる前の、小説や旅行記、短編や掌編、散文、詩、独り言などなどを、旅先から送る便りのように、気の向くままに、自由に、お届けできたらと思っています。
vol.1
https://c.bunfree.net/p/tokyo29/12011vol.2(完売)
https://c.bunfree.net/p/tokyo28/13987====================================
the letter from an attic — 屋根裏部屋からの手紙 —
『永遠の不在をめぐる』刊行後に執筆した即興小説を元に、掌編を三本掲載。
全編改稿済み、投稿時未完だった掌編については結末を書き下ろししています。
いつか短編集に収録されることがあれば、本文は修正が入るかもしれません。
<掲載作品>
・あなたの明日を人質に
・安寧に捧ぐ呪いの祝福
・永遠を保持する一つの方法
====================================
the letter from “rain forest” — 遠い国からの手紙 —執筆中の長編小説、熱帯地方の樹木変身譚から途中経過45000 字を掲載します。
追って刊行予定の完成版では、文章・構成・展開等に変更が入る可能性があります。
walking postcard vol.2掲載分から続いています。本号掲載分は第三章〜第四章です。
誰も逃げられなかった。夜更けのことだったし、たとえ起きていたところで、目の前で人間がいきなり変身させられたら普通は夢だと思うだろうね。
自分の腕が細く裂け、鱗粉を散らして背に翅が生え、呆然と墜落するときになって初めて、これは現実だと気づく。でも何が起きたのかは理解できない。
人間としての最後の視界は、こちらを見据える深緑の瞳だ。少年の指先に翅を摘まれ、優しい声で新たな名前を呼ばれたら、もう、自分が誰だったのかも分からなくなっている。
夜が明けると、村に人間は一人もいなかった。少年は、昨日まで人間だった蛾や蝙蝠や蛙の群れを引き連れて、森の奥へ帰っていった。彼らを近くの水辺に放し、昨日まで人間だった様々な種は、すべて母の根元に蒔いた。やがて、その一帯は花が咲き乱れ、蜜に誘われた鳥や獣の歌声で、いつまでも賑わうようになったという。
====================================
本誌に掲載する文章たちは、いずれも「途上」のものです。いつか単行本としてあなたに再会する日には、まったく違う形になっているかもしれませんし、まったく同じかもしれません。
そんな変化も含めて、この新しい便りが、楽しんでいただけることを願っています。