短編小説。
精神科医の森下芳之は、ある日の夜勤明けに若き男性患者・篠崎隼人と出会う。
隼人の口から繰り返し漏れる「ランパトカナル」という謎の言葉。
その意味がほどかれて「彼ら」の過去が暴かれるとき、二人の間に不可思議な絆が訪れる。
それを、いったい誰に咎めることができるだろう。
人が人を「救う」こととは果たしてどういうことなのか。
「救い」が起こるとき、いったい誰が「救われる」のか。
(命を無条件に肯定することがなぜこんなにも困難なのだろうか。)
問いかけはただ虚しく、「彼」の抱く傷だけがその答えを知っている。