ひとつのところをくるくると回っている。
鴨たち、月の精たち、閉じた本の頁の陰で。花びら一枚、落ちるほどでもない重みの夢で。わたしと水鳥たちが冬の名残りを求めている。芯のつめたい日々の裏で。並行して。人の生業の緩く曲がる、その暦の下の欄。
わたしと鴨たち。回っている。金いろの筆跡をたどっている。誰かには読めるかのように。
――「十五と、ひと夜」
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・本文は手書き原稿をスキャンして作っています。
活字と異なり、すべての文字が見やすくくっきり写っているわけではありませんが、
お読みいただくには支障ありません。
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