始まりはたった2人。
1組の『つがい』からだった。
喰らうことは禁じられていた、毒があると噂されていたその魅惑的なまでに赤い実。
それはただ見過ごすには、見逃すには惜しいと思わせる何かがあったのだ。
そこで彼は1つの疑問を持った。
『何故』その実を食らうことは禁じられているのか?
『どのような』毒がその実にはあるのか?
そもそも本当に『その実は毒を持っている』のか?
「何故だと思う? イブ」
「分からないわ、アダム」
残念なことに、その実を齧ったところで毒らしい失調は起こらなかった。罰は下らなかった。
それもそのはずだ。
その毒が猛威を振るうのは遥か未来のお話、アダムとイブがこの世を去ってから、気の遠くなるような永い永い時間を経た先のお話なのだから。
2人が齧ったその実の味は、とても言葉じゃ言い表せなかったけれど
きっと罪の味がしたんだと思う。
白色黒蛇初の短編集
これは壮大な、あまりにも壮大な『人間』の物語達