「お姫さま」をテーマにしたアンソロジーです。
■「末の姫君」(穂崎円)
いつかお前は娘を失うだろうと占星術師に告げられた国王――左利きの王と彼は呼ばれていた――は、まだ嫁いでいなかった二人の娘を宮殿の東の塔に住まわせることを決めた。
■「ただしいおひめさま」(柳川麻衣)
お姫さまになりたい、と思ったことはない。そもそも、中肉中背でこれといった特徴もない見た目の、地味で引っ込み思案な自分が、なれるはずがない。
■「まこと申さぬ少納言」(唐橋史)
特に男君(おとこぎみ)の文には必ず、荒唐無稽な唐や天竺での物語がまるで真の出来事のように記されて返ってくるので、忽ち、誰もが競って姫君に手紙を送っているというのである。
■「世耕本解」(犬塚暁)
本来男に生まれるはずが、呪いで歪められて女で生まれてしまったことの業なのか、慈充姫は生まれたときから恐ろしい怪力の持ち主だった。
以上四篇を収録しています。