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雨街で残響 下

  • Eホール(1F) | B-64 (小説|純文学)
  • あめまちでざんきょう げ
  • 転枝
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 240ページ
  • 500円
  • 2018/5/6(日)発行
  •  他人は、暗闇は、幽霊は、私にとって確かなものにはなってくれない。いつも私の身体を通り抜けて、それらは知らない間に消えるのだ。どうして誰も、私を撫でてくれないのだ。どうして誰も、私を愛してくれないのだ。

     他人の愛が、私を抱いてくれればいいのに。

     愛は形もないまま、幽霊のように過ぎ去っていく。

    『雨街で残響 下』 08「雪」より

    雨街で残響 下 紹介文と収録内容

     紹介文

     女と扱われない女たちは、男ではない男と寝るしかない。

     「雨」を浴びた者にいずれ訪れる「雨下症」という病。肌に斑点がふき出し、やがて血を吐いて死に行く彼らに、愛を育む意味は見出せない。責任を取ることができないから、行動も身勝手な子供のまま、ひたすら自分と他人を傷付けていく。  幽霊のようだった昔の恋人が目の前に現れ、ヒビキとその周りの女性達との関係も、狂った歯車のように回転を始めていく。


     収録内容  

     05「愛楊葉児」  自暴自棄のような戦い方をするヒビキに、スズネはなにも言えないままお台場をあとにした。なにもかもを知り尽くしているようで、二人はお互いの領域にまったく踏み込めないでいる。なにを大切にするべきか、もう誰にも分からなくなってしまいながら、ヒビキを誘惑するのは辻村家の長女、サキだった。

     06「言問橋」  ユキとの衝突の後、ヒビキは雨樋でスズネの住み家に身を寄せていた。ただ、そこで流れている時間もまた、ヒビキとスズネを苦しめるだけの退廃に過ぎなかった。自分の好みすら満足に話せない、自分の主張が空っぽなヒビキに対し、スズネは一つの提案をする。  

     07「残響」  チトセが帰り、そして死んでからの僅かな時間。その間に壊れた関係は、少しだけだがもとの綻びのまま再び繋がり始めた。  ヒビキはなにも進展していない身の回りの関係に、それでも少し安堵を覚えるようになっていた。  自分のためにどれだけ泣いていないのか、彼はもう分からなくなっていた。確かなのは、本当は他人である家族に抱きしめられたいという想いだけで、そうすれば、きっと涙を流せるのだろうということだった。

     08「雪」  一〇年前、戦争が始まったあの日以来、ずっと降っていなかった雪が、雨街に舞い降りる。  青いマフラーの少女、ユキはヒビキの家を訪ねる。スカイツリーと雷門、二つのランドマークが挟むその場所に、なにかが残っていると思いたいから。


    その他情報

    表紙イラスト イツミミタ

    著者 転枝

    サークル 木の葉スケッチ

    サイズ 文庫

    ページ数 240

    装丁 表紙一色塗り カラーカバー付き

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