こちらのアイテムは2017/11/23(木)開催・第二十五回文学フリマ東京にて入手できます。
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雨街

  • D-18 (小説|エンタメ・大衆小説)→配置図(eventmesh)
  • あめまち
  • 転枝
  • 書籍|A5
  • 18ページ
  • 0円
  • 2017/11/23(木)発行
  •  

    「ねえ、私のこと、どれくらい好き?」

     またこういう事を言う。いつもいつも、どうしてそんな風に期待を隠しもしない目を曝せるんだろう。僕はうんざりして息を吐こうとした、けれど、そうしてしまったら今度こそ彼女への愛が無くなってしまうの気がして、飲むしかないと胃を汚した。

    「そう、言えないのね」

     言えないよ。そう心の中だけで返す。部屋はもう暗いのに、僕たちの命ばかりが燃え上がって、休むことのない鼓動を互いに感じている。手と足を絡めたまま、ドロドロに腐敗してしまうまで抱き合っていれたなら、僕たちは少しでも互いを理解しあえるのだろうか。そんなはずはなくとも、夢を見るようにして二人は眠りに落ちていく。あるいは眠りから覚めるようにして。この街、雨街は暗い夜をつれてくるから、一人で過ごすにはあまりに寒く、二人で過ごすには狭すぎる。明日の朝に食べるもくらいしかない、何もない部屋なのによく彼女は僕の部屋を訪れたものだ。それだけの思いでやって来て、言ってもらいたいことはなんだったのだろう。分からない。僕は彼女のことをどれくらい好きだなんて考えたこともない。

     だって彼女のこと以外、僕には好きなものが一つもないのだから。少ないけれど、僕の持っている愛情は全部彼女のものだった。それだけだった。

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