まわりうた・回文歌、ともゑうた・表裏歌で、和歌と俳句と散文詩の創作をしています。2017年5月頃からいろはうたも始めました。
創作回文歌・表裏歌の和歌集2冊目の新刊「鏡 歌」は、両側表紙で本編と解読編となっており、解読編を天地逆転させて本編と背中合わせにして一冊に繋げています。乱丁本ではございませんのでご安心ください。紹介画像のアート作品は「本編」の表紙に使わせていただいたマンデルブロ・フラクタルアートです。(奈良平群庵様ご提供)4月1日のTextRevolutionからの頒布は、初版を大幅に加筆修正した第2刷改定新版となります。
2001年頃から回文和歌やいろはうたを創作されている方を知り、衝撃を受けて以来、その方とその作品に刺激されるように「まわりうた」を創り始めました。創作回文歌や創作いろはうたは言語の持つ、神秘の途方もない世界を示して、言語表現の新たな表現形態として無限の可能性を見せてつけていました。江戸時代にも流行して楽しまれた古典でありながら今ではまったく新しいと感じられる表現形態であり、そして言語そのものがまだほとんど何も探求されていない領域なのだと思い知りました。2012年からの自作も300歌あまりになり、今回その中から100歌と少しを厳選しました。無限の創造を秘め、時に震撼するような言葉の万華鏡の千変万歌をお楽しみください。
【内容一部紹介】
「回文歌(まわりうた)」とは、頭尾どちらから読んでも同文、同文句に作られた和歌の事です。
ねふりとし らいのねかはに うちくたく ちうにはかねの いらしとりふね
ー 眠り都市 禮の音が場に 打ち砕く 宙に鋼の いらし鳥船 ー (歴史的仮名遣いで成立)
みなもはゆ いめふなとした さくらなら くさたしとなふ めいゆはもなみ
ー 水面映ゆ 夢舟とした 桜なら 種多枝となふ 命游はも波 ー (歴史的仮名遣いで成立)
とほくきく はかねのそらは よちしつし ちよはらそのね かはくきくほと
ー 遠く聴く 鋼の空は 輿地鎮し 千代は螺その音 我剥ぐ聞くほど ー (歴史的仮名遣いで成立)
むらくもは ねをのしふくふ あみしろし みあふくふしの をねはもくらむ
ー 叢雲は 音を伸し葺く布 網白し 見仰ぐ富士の 尾根は潜らむ ―(歴史的仮名遣いで成立)
意訳 空高くもくもくと音を立てて広がる雲が富士の高嶺に白い布を葺いたようだ。布の網目は白く、富士の尾根が雲の網目の切れ間に見え隠れしながら潜っているよ。
「ともゑうた」とは、この形式は師匠が考案され「ともゑうた」と名付けられた形式を私が漢字の当て字をさせて頂き「表裏歌・巴表裏歌・巴歌(読み:ともゑうた)」と当て字しました。「表裏文」とは、歌集を出版するにあたりこの形式の説明のために、回文や回文歌に対して造語しました言葉です。頭尾を逆にして読むとそれぞれで違う文意、語意が成り立っており、またそうなるように作られた文、文句のことで、それを指して「回文」に対して「表裏文」と呼ぶことにしました。この表裏文で作り、一つの歌文の中で頭尾を逆にすると表裏で違う歌が成立している和歌をまわりうた共々、短歌や俳句、散文形式でも作っています。
なかニハト いなのひてなフ きかのゆツ かとふとつひマ くさなきていス
(左から表) 中庭と 稲伸びて並ぶ 木花の移つ 香飛ぶ十つ美眼 草凪ぎて癒す
(右から裏) 粋で稀な 咲く真日集ふ 音が露の 垣船出日の 唯永久にかな (歴史的仮名遣いで成立)
ここのまい まはたきおしむ はれしけさ
(左から表) 故吾の舞瞬き惜しむ晴し今朝
(右から裏) 咲け知れば無私置た波間今の此処 (現代仮名遣いで成立)
「かがみうた 鏡歌」とは、回文や表裏文となした変則的短歌や俳句、自由散文歌などの回文表裏歌を指しています。回文や回文歌、や表裏文や表裏歌は、言葉を鏡面反転させて出来た鏡面反転文、歌に成ったものをそれらを総じて「鏡合わせ歌」「鏡面反転歌」と言えるものだと気づき、その中で特に語数や区切り方が形式に当てはまらない回文歌、表裏歌を「かがみうた 鏡歌」と名づけ、呼ぶことにしました。
くうとふわにかいたふかうみへ
うちいてうめしよふうたのよふ
ゆかりかひらきしほとりたみ
空飛ぶワニが居た深海へ うち出で生めし呼ぶ歌の酔ふ 縁が開きし畔廻み
見たりと星綺羅光り変ゆ 賦与の賜ぶ吉妙諦 宙へ身浮かぶ 大河に我 ふと 浮く (歴史的仮名遣いで成立)
「48音ーヨハネーいろはうた」は、有名な「色は匂へど散りぬるを・・」のように日本語表音文字を全て重複させずに1音づつ使い47音に+んとして48音でいろはうた形式にした歌です。
はくしゆのむへ あをもゐて 麦酒呑むべ 青も藺で
えたまめにおう ゑびすかほ 枝豆におう 恵比須顔
ころんとねふけ さそわれり ごろんと眠気 誘われり
よせるちみらい なつやきぬ 寄せる地味禮 夏や来ぬ
解説 「青も藺で」は、いよいよ青い香りを放つ藺草の畳で、という感じです。窓の外からの新緑の風の青さを畳の上で感じ。「枝豆におう」は、家族が気を利かせて茹でてくれた枝豆に「おう!」と笑顔と歓声を上げながらいよいよ麦酒はすすみすっかり恵比須顔にという感じです。(実は銘柄にちなみこのエビスが入っているのですが笑、それを重ねています^^)本当は「枝豆匂う」にしたかったところですが歴仮名は「にほふ」。偶然韻で「匂う」が重なって入ってきてくれました。