こちらのアイテムは2017/11/23(木)開催・第二十五回文学フリマ東京にて入手できます。
くわしくは第二十五回文学フリマ東京公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)

氷の花の香りは

  • B-62 (小説|ライトノベル)→配置図(eventmesh)
  • こおりのはなのかおりは
  • みすてー
  • 書籍|A5
  • 500円
  • 母と共に行方をくらませていた姉姫。
     ずっとひとりぼっちだった妹姫。
     そして、その二人を守り育む騎士たち。
     生き別れた帝国の皇女たちはその立場に葛藤し、反発しながらも、母の遺した「香り」に導かれる。

     姉と妹、騎士たちの絆を描くロイヤルファンタジー。
     TRANSPORTERシリーズの前日譚(未読でも大丈夫です)。 


    ◆本文抜粋◆

     帝国劇場の貴賓席。
     舞台袖の二階席。レースのカーテンが周囲を覆い、曲線美が豊かな彫り物を施されたテーブルと上等な革でしつらえた椅子が二つ、もうけられていた。

     ちいさなラウンジとして、くつろいで観賞できる特別席だ。

     横からの視線になるので視界や音響が優れているとはいえないが、中二階として設けられており、一般客席からはのぞけない仕組みになっている。
     貴族や皇族たちの逢瀬。あるいは政治や外交の秘密裏の会合につかわれる傾向がある。

     そんな秘密の小部屋に通され、青い髪の少女は相手を待っていた。
     肩で切りそろえられた、鮮やかな青い髪。そして、群青色の瞳。
     その蒼さを人はロイヤルブルーと呼んだ。帝国皇室だけが受け継ぐ、髪と瞳の色。
     従者もつけず、ぽつんと立っている。手ぶらでやってきたため、手持ち無沙汰を感じ、手すりに手をかけて一般観客席と舞台を覗き込む。

     ちょうど歌手が現れ、拍手が沸き起こる。
     どこからどうやって照らされているのか。青い髪の少女にはまったくわからなかったが、舞台を照らすスポットライトが女性歌手を艶やかに染め上げる。

     明かりが消され、徐々に薄暗くなる。天井の高いホールに響く歌手の挨拶。

     魅力的なステージパフォーマンス。

     それらすべてが少女にはとても新鮮で、心奪われるには充分だった。
     やがて、張りのある伸びやかな声で歌いはじめる女性歌手。
     彼女の着ているドレスは体のラインに合わせた薄手のワンピース。桃色の髪に合わせて赤系の色合いだ。胸元のシルバーアクセサリーがライトの光を反射する。

     感情をしぼって、語りから入るバラード。

     はじめてみる舞台、はじめてみる歌手、はじめて聞くプロフェッショナルの歌声。
     そして、客席がひとつの意志の様に集中して聞き惚れる一体感、それを最高級のドレスを着て、特別の部屋を与えられてというゼイタクな観賞。

     はじめてづくしの体験に頬が染まり、胸の高まりが止まらない。
     彼女の青色の髪にあわせ、白系でまとめられたワンピースのドレス。
     肩を出し、襟や裾をフリルで包んで、正直照れくさい。

     ――まるでお姫様だ。

     青い髪の少女――ミストはそう思ってみたが、ふと頭をかしげる。

     ――そうか、お姫様になるってこういうことか。

     自分の胸元には拳大の宝玉が鎮座している。そのこと以外はそれこそ、お姫様の立ち位置だった。
     一曲目がフェードアウトする。

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