飴屋京「またねー」
一緒に死んでほしい。目の前の女にそう言われて即座に断れるやつなんかいない。
見た目が好みだった。かわいくて、痩せていて、連絡がつかないとやたら怒るし泣くけど、謝れば許される。ちょっと面倒で手のかかる彼女。
「つまんな」
さっぱりとそう言い切った友人はそのまま俺を置いてどこかに去っていった。──どこがつまらなかったんだろうか。彼が言いそうなことはいくつか思いつく。
どうせ彼女と死ぬなら面白いのがいいよなあと思った。
──これは、ぼんやりと心中に向かう男の話。
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かくた「波の下にも都はさぶらふのか?」
社会人となった幼なじみの香と舞は、休日に海沿いの町へ小さな旅に出る。思い出話や他愛ない冗談を交わしながら走る車内で、香は長年誰にも語れなかった過去を少しずつ口にしていく。家族、故郷、そして生き延びたこと。
波の下にも都はあるのか──初夏の二人の物語。
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都築なつ「落花」
他人にあまり興味が持てない「私」は、同僚に誘われて行ったライブで地下アイドルの「ココちゃん」に出会う。興味がなかったはずのライブに通うようになった私だったが、ひょんなことからココちゃんと「お友達」になることに。アイドルと観客という関係から始まった不思議な友情は穏やかに続いていたが、ある日私はココちゃんから「私と一緒に死んで」とお願いをされ……。ふりふり、きらきら。闇の中に夢のように消えていく。不思議でささやかで、短く儚い、夢の終わりを描く物語。
桐崎鶉「他人ばっかり」
近頃町では心中事件が相次いでいた。
小説家・山川も野次馬の群がる一家心中の現場を見かけて、「流行っているのかい、近頃」と自身の家へ通う若い男・樹へ問いかける。──樹は山川の弟子ではなく、山川が身投げしようとしたところを偶然通りかかったのをきっかけに、勝手に山川の元へ通い、世話を焼くようになった洋食店の下働きであった。
樹を追い出すきっかけをつかみかねる日々のさなかも心中事件は止まず、騒ぎは二人の周囲にも忍び寄る。事件に巻き込まれていくなかで、山川と樹の死にまつわる奇妙な運命が明らかになっていく。