ああ、わかってる、俺はまだまださ。親父の槌を使っていても、親父と同じようにやっているつもりでも、そう簡単に親父のようにはなれない
「子供には罪がない」は2010年にA5版で刊行し、文学フリマ非公式ガイドブック(当時)第3版にご紹介頂いた熱帯ファンタジ三部作の3作目です。この度、「雨の匂い、石の祈り」として文庫化することにしました。「雨の匂い、石の祈り」は分売不可なのですが、旧版はまだ在庫が少しありますので、そちらは単品でお求め頂けます(頒価300円)。
親は生まれたばかりの子に石を授け、それを腕輪の最初の石とする。
年を重ねる毎に一つずつ腕輪に石は増える。
しかし、一番最初に授けられた石こそが、その子に与えられた精霊の加護を決めるのだ。
腕輪の石は精霊の加護にして、その者がこの大地で重ねた時間の証。
命尽きるその時まで、いつも左の手首を飾る。
これは、そんな国で暮らす人々の物語。
西の果て、死者の魂が還る霊峰の麓に、鉱石細工の技量で知られるアカドリ族の谷がある。その氏族を守護する霊鳥アカドリと同じように谷を離れることがないアカドリ族の元には、彼らが造り上げる細工物を求めて国中から商人が訪れる。
アカドリ族の鉱石細工職人バトゥは、伝説の職人と名高いペラァクの息子であり、その後継者である。バトゥには同じように鉱石細工職人の修行をしていた兄、ブルゥがいるが、ブルゥは早くに職人の道を諦めており、それがバトゥとの間に小さなしこりを残していた。
雨の季節、兄ブルゥは生まれてくる自分の子のために禁を犯して森へと踏み入り、優れた加護を宿した石を探していた。村人が噂をはじめるころ、旅の僧がペラァクを訪ねてバトゥの工房を訪れる。僧が風を読み、語った兄弟の未来とは。
この「緑」と「地」、そして「職人」の物語に解説文を寄せて下さったのは石川豪(@lasahJP)さん。二子玉川にあるお茶と食料雑貨の店「ラサ」の店主で、僕はDTPをお願いしている加藤悠二さんの紹介で通うようになりました。今回の「雨の匂い、石の祈り」の制作に当たっても何度もこのお店で打ち合わせをしています。
文化人類学のバックグラウンドをお持ちで、お店に遊びに行った時にはフィールドワークで得た豊富な知見に基づいて興味深い話をしてくださいます。この「子供には罪がない」は、生と死を一つのテーマにしていることもあり、儀礼が重要な位置を占める物語です。この物語の解説を依頼するに当たって加藤さんから「石川さんはどう?」という話を貰って、考えれば考えるほどこれ以上はない人選だということで依頼させて頂いています。
自分の書いた小説の解説にレヴィ=ストロースなんて引かれてしまうと少しかしこまってしまいますが、僕が架空の世界に導入した秩序について語ってくださっています。
それでは、暖かく湿った空気と噎せ返る緑の匂い、雲の向こう、雨の隙間、太陽が踊るあの場所で。
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