AIが歴史上の人物を呼び出し、昭和の町がよみがえり、魔法の代償が死後に支払われ、 猫が世界の仕組みを変え、検索エンジンが文明を揺るがし、 そして誰にも知られずにゲーム世界で英雄となった男の遺品が静かに残される……。
どの物語も、現代社会のひずみや、テクノロジーの暴走、 人間の孤独、家族の誤解、そして小さな優しさを、 軽やかな語り口で描き出します。
読み手は、ページをめくるたびに世界の“別の側面”へ連れていかれます。 それはSFであり、寓話であり、社会批評であり、猫の物語であり、 ときに静かな人生の断片でもあります。 ジャンルはバラバラなのに、どれも「人間とは何か」という一点でつながっている掌編小説。
そして最後の数篇で、物語は静かに速度を落とし、 昭和の町のぬくもりや、故人の残した小さな痕跡、 猫の家族のささやかな幸せ、 そして“彼岸”の気づきへと着地していきます。
読後には、まるで長い旅を終えたような余韻が残る。 文明の大きな話から、人間の小さな話へ── その流れが、この短編集を一冊の“物語”にしているのです。
世界の複雑さと、人間の愛おしさを、二十の断片で描き切った一冊。 軽やかに読めて、深く心に残る。 そんな短編集を求めるすべての人に、静かにおすすめしたい本です。