【BL】孤独な魔物は愛を知る【R18】
- ち-12 (小説|BL)
- こどくなまものはあいをしる
- まつのこ
- 書籍|文庫判(A6)
- 120ページ
- 1,000円
- https://simca4463.booth.pm/it…
- 2022/9/4(日)発行
R18BL
人には魔力が秘められているのが当たり前な中、小さな村に住む青年レオは魔法が使えなかった。
かつては嘆いていたけれど、今では村一番に剣を使いこなすようになっていて人々の役に立って好かれている。
ある日、村の人々を魔物の驚異から守りたい一心で、森の奥へと入っていく。
そこには恐ろしい魔物が棲んでいるので近づいてはいけないと言われていた。
だがそこには、銀髪の美しい青年──クレインがいた。
ここは危険だとレオが助けようと手を差し出すが、予想外の反応を返された。
「……僕に構わないで!」
魔法が使えない青年と、魔力が強すぎる孤独な青年の、ハートフルファンタジーストーリー!!
~~~~~~~本文サンプル~~~~~~~
「てあぁっ!」
レオの視線の先には魔物がいる。
容赦なく襲い掛かってくる人とは異なる姿をした存在に、レオは臆することなく剣を振りかざす。的確に、素早く繰り広げられる攻撃は、狙っていた場所へしっかりと刃を入れた。
急所を斬りつけられた魔物は、耳障りな声を上げながらその姿を灰へと変えていった。徐々に形が消えていき、ここに魔物がいたという痕跡は全くない。
「あ、ありがとう、レオ!」
レオの後ろにいた女性が安心した声で感謝を伝える。
くるりと振り返ってその表情を目にした途端、レオの頬は緩んだ。
「無事でよかった。魔物ならいつだって俺がやっつけるからね!」
「レオは頼もしいねえ。剣の腕は村一番かな?」
「そうかも!」
あはは、と笑うレオの声に、女性もすっかり笑顔になっていた。
魔法は使えないけれども、どうしても村の皆を魔物から守る力が欲しい。幼い頃から抱く願いは、剣術という技術で実現することができた。
人一倍誰よりも努力を積み重ねていき、今ではすっかり頼られる存在になった。
誰かに頼られることは嬉しいけれど、安心して暮らすためには魔物の数が減ってほしい。そのためには、今しっかりと戦っていくべきだ。
レオは剣を鞘に収め、腰にしっかりと下げた。
「じゃあ、気を付けてね」
「レオはどうするの?」
「もう少し森の方を見回ってくるよ。最近魔物の数が増えてるらしいから」
「気を付けてね、レオ。森の奥は特に危険だから」
「分かってるって」
そう言ってレオは森の方へと進んでいった。
魔物は森の中に生息しており、人々はあまり近付かないようにしてはいる。しかし、村の外へ出ていかなかればならないこともあるため、また、村に近寄られないようにするため、レオは見回りとして森の中へ入っていく。
森の奥には魔物の棲み家があり、そこには誰も手の打ちようがない恐ろしい魔物が棲んでいる。
レオは小さいときからそう言い聞かされていた。
子どもは皆そのことを聞くと怯えていたが、ただ一人レオは立ち向かおうとしている。
村の皆のために。
それがレオの原動力となっている。
いつもとは違う方向へ進んでいくレオ。そのせいか、今までで一番距離を伸ばしているようだ。
油断は禁物である、そう気を引き締めつつも、魔物の姿が全くいないせいか意識が別の方へ逸れてしまっている。
飽きるほど何度も見てきた森の景色。同じように木々が鬱蒼と茂っているだけだと思っていたが、今のレオはこころが安らいでいるような気がする。
これほどまで静かな場所は、村では恐らくないものだ。
これからもこっそり来たいなと思っていた。
すると、微かに高い音が聞こえてきた。
レオはそっと剣に手を伸ばし、いつでも抜けるように構える。
だが、魔物のものとは違うそれは、何か別のものの鳴き声だろうか。たとえば、小さな鳥の囀り。
危険な森の中に魔物以外のものがいるとは思えない。
レオは気になってしょうがなくなり、音のする方へ静かにゆっくりと進んでいく。
目に入る景色は変化を見せないが、音の正体には近付いているようだ。
一つだけだと思っていたものは、また別の似たようなものも聞こえてきた。
用心するに越したことはないと、徐々に足音にも気を付ける。
しばらく進んでいくと、少し先が明るくなってきた。
木がないのだろうか。
改めて気を引き締め、レオはその先へと進んでいく。
そして視界が急にひらけた。陽の光がやけに眩しい。
可能な限り目を閉じずに周囲を見渡すと、小鳥の姿が目に入った。
あの音の正体は、小鳥の囀りだった。小鳥たちから同じ音がしている。
よくよく見ると、小鳥以外にもウサギやリスといった、小さな動物たちがたくさんいる。
こんな森の奥に、ひっそりと動物たちが棲んでいる。レオは驚きしかなかった。
その中央は、レオをさらに驚かせた。
人がいる。
見たこともないその人は、銀色の長い髪を美しくなびかせている。それはまるで、おとぎ話から出てきたように美しい。
慈しみ深い笑みは指先に止まらせた小鳥に向けられ、レオの存在には気付いていないようだ。
正体も分からない存在にもかかわらず、レオの視線はその人に釘付けになって離せなかった。いくらか心臓の鼓動が速く脈打ち、どうしたものかと思ってしまった。
ふと、ここは森の奥という危険な場所であることを思い出した。今は魔物の姿はないけれど、いつ襲ってくるか分からない。
レオは目の前の人物に近付いていき、声を掛ける。
「ねえ」
突然のことに全身を大きく震わせ、笑顔は一気に消えてしまった。そしてその顔は、恐怖に包まれてレオの方を見た。
そこまで驚くことはないのに。
それでもレオは笑みを崩さずに話し続ける。
「ここは危ないよ。恐ろしい魔物が棲んでいるんだ」
「えっと、その……」
震えている声は、すっかりレオにおびえていることを露わにしている。
同時に、少し低い声が、男であるとレオに分からせた。
ただ話し掛けているだけなのに、ここまで恐怖される理由が分からない。
もしかしたら、レオには見えない恐ろしいものが彼には見えているのだろうか。
それでも、彼がここにいるのは危険しかない。
「どうしたの?」
そう言いながらレオが手を伸ばすと、彼は思い切り手を引っ込めた。
「ねえ!」
負けじと、ぐい、ともっと手を伸ばす。今にも走って逃げそうな彼の腕をようやく掴んだ。
触れた部分から伝わる彼の震えは、明らかに恐怖を抱いていることを感じさせる。
一体何が怖いのだろうか。
彼の視線はレオに向けられているが、口元を震わせるだけで何も言葉を発しようとしない。
レオは聞き出したい欲をこらえつつ、じっと彼を見つめる。口元の笑みを保ちつつ。
「あ、あの……」
ようやく彼は口を開いた。今にも泣き出しそうなほど声は震え、目元も潤んでしまっている。
「大丈夫……?」
これ以上言葉がなく、レオは再び問い掛ける。
