きみと共に沈めたら
- ぬ-25 (小説|ファンタジー・幻想文学)
- きみとともにしずめたら
- 時雨 縹
- 書籍|文庫判(A6)
- 244ページ
- 1,200円
- 2025/5/11(日)発行
共犯×心中×女二人
夏×現代×ロマンシス
「久しぶり」から始まったメールは、小中学の頃の同級生である松川陽菜乃から受け取ったものだった。
その名前を見た瞬間、奏の脳裏に幼少期の記憶が蘇る。
白いカーテンが、開け放たれた窓から抜ける風に煽られて、大きく揺れていた。
窓の外には晴れ渡った夏空が広がっていて、白い入道雲が眩しかった。
夏の中心で、陽菜乃の長い髪が揺れる。それはさながら、真夏の陽炎のように触れようとすることも烏滸がましいと思ってしまうような、どこか幻想的な景色であった。
あの頃と同じ綺麗な顔で、あの頃と違う笑みを浮かべて、陽菜乃は「死ぬつもりなんだ」と奏に告げる。
優しく誰からも愛されていた少女の言葉に、奏は「あたしも、連れていってよ」と手を差し出した。
優しい人が泣かなくて済むように。
優しい人が苦しまなくて済むように。
笑って、泣いて、死を願って、生を叫んで。
そして、すべてを終わりにしよう。
これは、優しい人に手向ける少女二人の夏の物語。
