異国の歌を口ずさんでいると、いつの間にかその一節が、子どもの頃から口に馴染んだ言語にすり替わっている。あるいは、外国語で書かれた物語を読んでいると、登場人物のセリフが、故郷にいる古くからの親友の口調で聞こえてくる。まるで言葉が、自分の口元や耳元で突然変身をとげたかのように。
身体に電流が流れるような強烈な刺激。思わず頬を赤らめるほどの快感。翻訳者のこうした原体験は、翻訳された物語の後ろに多かれ少なかれ秘められていることだろう。
第七号となる今回は、以下の通り、モザンビーク、モンゴル国、パレスチナ、フランス、ロシアの作品を収録。
1 信じる者は救われる?――ポルトガル語文学(モザンビーク)
「健康を求めて―旅の記憶―」
ジョゼ・アルバジーニ 著
大前秀美 訳
2 向こう側の世界――モンゴル語文学(モンゴル国)
「アクアリウム」
ロブサンドルジ・ウルズィートゥグス 著
阿比留美帆 訳
3 送りえぬ手紙――アラビア語文学(パレスチナ)
「五月半ば」
ガッサーン・カナファーニー 著
溝川貴己 訳
4 書けない理由ならいくらでも――フランス語文学(フランス)
『ハリネズミについて』
エリック・シュヴィヤール 著
稲田紘子 訳
5 それでも私たちは創造するか?――ロシア語文学(ロシア)
「十分〔ルビ:じゅうぶん〕」
イヴァン・トゥルゲーネフ 著
横江 智哉 訳