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「月光の封土 外伝 風鳥詩」について
(この物語は、「月光の封土シリーズ」の登場人物の過去にまつわる外伝ですが、本編をお読みになっていなくてもお楽しみいただけます)
闇の御神の創造せし世界がある。
蒼と銀、ふたつの月がしろしめす天空。
光砂によって生み出される陽光のない朝。
創造主たる闇は、遙かな過去に喪われている。
森の民、人狼族、石化獣族、竜族、化鳥族……遠いむかし、神々のあいだで戦われた戦(いくさ)によって、栖(すみか)たる世界を喪い、闇に導かれてこの世界に安息を見いだしたおおくの種族が住まう大地。
そして……ひとの血を飲み、その祈りによって世界の安寧を約束する祈族(きぞく)たち。
*
珪珂(けいか)五年 冬
物語は、ひとりの青年が、捕縛され、王の裁きをうけるところから始まる。
他者の憎しみの声を聞き、ひとの死を金に換えて生きる暗殺者……ラシード・ダバス
「金さえ払うんなら、だれだって殺してやる」
だれからも自由であり、なににも囚われない風の魔法使いにして暗殺者に対し、国王がくだした裁決は……王の首環(くびわ)を嵌(は)め、王の所有物として魔法院で働くこと。
そしてもうひとりの青年……イズミル子爵領行政官リシェル・オウン
領宰(りょうさい)の専横がまかり通る子爵領で、領民のために奮闘する彼の後ろ盾は、死期の迫る子爵のみ。
*
珪珂(けいか)七年青穂月(あおほづき)十八日
降り続く雨の夜、彼らは出会う。
すべての出会いがすべからくそうでなければならないように、必然として。
迷いを捨て翼を失った魂と、迷いながらも前を向き続ける想いが出会ったとき、彼らが互いに手に入れたものは?
これは……ひとがそれぞれの「向かうべき明日」を見つけるための物語
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