いつか、地上に棲めなくなった人々は、
《方舟》をつくり、空へと逃れた。
滅びをもたらす《かみさま》の影に怯えながら、
雲に隠れて、空を往く。
飛べるこどもは雲の外で、かみさまと戦い、方舟を守る。
飛べないこどもは夜の中で、からだを拓き、おとなを迎える。
そして、飛べなくなったこどもは、やがて次のおとなになってゆく。
空という檻の中で。
失って、喪って、うしなって、それでも彼らは願いつづけた。祈りつづけた。
生きるという、罪と、贖罪と、希みを。
★既刊「羽人物語 星籠」と「羽人物語 花籠」を、
一冊にまとめて書き直したものです。
一冊で完結するように、再録本にしました。
★一部ですが、流血、同性愛(BL/GL)、性描写を含みます。
【試し読み】
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=8821118
【あらすじ】
~星籠~
いつか、地上に棲めなくなった人々は、《方舟》をつくり、空へと逃れた。
《かみさま》の影に怯えながら、雲に隠れて、人々は生きている。
そんな世界に或る双子の兄弟がいた。
空を飛ぶ力をもって生まれ、《戦闘機》として空でたたかうことを定められた瑠璃と、
空を飛ぶ力をもたず、夜毎おとなたちに夢を売ることを定められた玻璃。
《社》と《籠》に隔たれながらも、共に、ふたりは生きていた。
このまま、ずっと、こどもでいられたなら――けれど、それは叶わない。
七夕祭も近づいた、その年の夏、ふたりの日々は儚く罅割れていく。
おとなになれば、飛べなくなる。
おとなになれば、棄てられる。
閉ざされた世界の中で、ふたりが紡いだ願いは――
羽人物語 第一章 星籠
希望と絶望と、願いと祈りの物語
~花籠~
七夕の日から、数年後。
戦闘機・鴎は、淡々と任務をこなす日々を送っていた。
一方、《社》では、柊の研究が実用化に向けた最終段階を迎えていた。
そして、おとなのための遊びの街、《籠》。
そこには、夜毎おとなたちの欲を吸い咲き誇る、《花》と呼ばれる少女たちがいた。
《籠》で生きる桔梗と睡蓮。血の繋がりはなかったけれど、
ふたりはともに姉妹として、互いに慕い、慈しみ合っていた。
だが、愛しい平穏な日々は脆く、冬の訪れとともに音もなく崩れていく。
「私に、罪をください」
或る夜、楼閣を包む炎の中で、鴎は、ひとりの少女と出会う。
「罰を得るために」
少女が望んだのは、戦闘機として己の体をつかい尽くす道。
滅びゆく心と命の先に、少女が希ったものは何なのか。
羽人物語 第二章 花籠
願いと祈りと、罪と贖罪の物語