前橋青春小説の完結編です
まえばし四重奏(後編) スナメリ
前橋の高校生、さくらと俊司(シュン)は幼馴染である。さくらは優等生の俊司が好きだったが、
俊司が苦しい恋をしていることに気づいていた。純文青春小説
かし、台風のときには利根川を牛が流れてきた、とは前橋の有名な伝説である。関東の中ではずばぬけて災害が少ないことで有名だったが、市内のあちこちに川が流れていたので、水害だけは別だった。
だがそれも、利根川の堤防がまだなかったころの話である。いまでは、中心部を流れる広瀬川や馬場川はもちろん、暗渠として市庁の周りをめぐる小さな水路にも水があふれることはまずなかった。
また、水とともに前橋に流れ込んでくるものといえば風である。冬の名物ともいえる赤城おろしは、寒ざらしでおこされた畑を地響きをたてて走ってゆく。
そしてもうひとつ、前橋と言えば教会だった。川と同じぐらいには市内のいたるところに古い教会が建っていて、高々と十字架を青空に光らせている。
ポータブル・バディ あおいかずき
1号「カラスとラスク」美月・クロのコンビに、もう一人謎の『彼』を加えた
ちょっぴりSF風味ライトミステリ完結編。「よっし……。USB,USBメモリっと」
わたしは足元に転がしてあるボストンバッグを手探りで漁った。
小さくてちょっと硬質な手触りのそれはすぐに指先に引っかかる。
取り出してほぼ無意識に、ノートパソコンのUSBポートに差し込んだ。
ぴ、とかすかな音がした。
そしてすぐさまモニタ上に白いウインドウが開く。
あれ? これ自動再生のデータなんて入ってたっけ、
とのんきなことを考えていられたのはこの時までだった。
「な……に?」
モニタに目を移したわたしは息を飲んだ。
そこには白いメモ帳のウインドウが開かれちかちかとカーソルが点滅して
――いるだけではなかったのだ。
『やっと出られた!』
白い画面に浮かび上がる、黒いゴシック体の文字。その飾り気のないフォントは唐突に表れた。