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目の落ちる転がる現在は身もそぞろ

  • ア-07 (小説|純文学)→配置図(eventmesh)
  • めのおちるころがるいまはみもそぞろ
  • 遠藤ヒツジ
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 112ページ
  • 300円
  • 2017/03/26(日)発行
  • 今までに寄稿した作品群の中から、恐怖・不条理系の作品をまとめた自撰集。
    水に救われた過去を持ち、水の販売促進活動に邁進する男の悲劇「ワレットのよるべない水の話」。
    ふいに消えてしまった漫画好きの恋人との生活を漫画に描く男の話「そぞろ」。
    自分にそっくりな遺体を発見したDQNがはしゃぎあう「粗忽DQN」。

    などなど、気味の悪い小説ばかり13作集めている。

    どうしてそうなってしまったのか、理由のない、不穏な、小説で、背筋をぞわりと撫ぜてやりたい――。

    ===================================================
    「遅れてきた女たち」より)

    「金になるから」と言われ、「金になるなら」と男に誘われるままに万年床から身体を起こして、アパートの一室を出た。
     俺と男は肩を並べて、うねる街路を歩んでいった。と思えば、吊革につかまってどうやら山手線に乗車しているらしかった。俺と男の間にはまだ春先のようなのに、ダンクトップ一枚で谷間の大きく開いたエロティックな暗い色の金髪女がいて、なぜ俺と男の間に見知らぬ女が割り込んでいるのか分かりようもない。  見知らぬと言えば、改めて見ていると俺を連れて歩き今同車している男の顔に俺は覚えがなかった。 「なあ、あんた誰だい。俺の何だったかな」  すると男は事も無げに言う。 「高校の同級生の相川じゃないか」 「なんで高校の同級生の相川が俺と一緒にいるんだ」 「おいおい、確かに親友とは言わないけど、遊んだ仲だぜ。それに飲み屋で偶然再会したお前が精神疲労で職を失ってから、働く場所を探しているというから今日こうして付き添って知り合いの職場に行こうと言うんじゃないか。斡旋だよ」
      なんだかあまりにもペラペラと言葉が口につくのを羨ましく思った。
     そうか、俺は精神的に打ちのめされてて、同級生に就職の斡旋をしてもらうのか。なんだか恥ずかしい気分も少しは沸き上がってきたが、何より仕事なんて面倒なことは嫌だなと渋い顔をした。どうして仕事なんてもののために相川についていくんだ。庭付き一軒家に帰りたい気もする。アバラ屋みたいなとこだっけか? 帰るか。しかしこの乗車してるのは本当に山手線か?  不意と隣で舌打ちのような嫌な感情の音が聞こえて、金髪を見るついでに谷間をもう一度拝もうと思って目をやる。すると、女はいつの間に下車したのか。代わりに脂っこい中年の薄い頭が見えた。中年は口の中をねちねちと小さく鳴らして時折、体内のリズムを整えるようなはっきりとした音量の舌打ち音を鳴らした。チッというより、ツァッ! という感じ。
     相川は手でスマホを扱う指さばきを見せていたが、どうにも俺の目にはスマホが見えない。メガネかコンタクトを忘れてきたのだったか。視界不良なのか? スマホって何だ。急に分からなくなって、何も考えられなくなった。

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