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スティール・ライフ短編集2 break time

  • 1F 第二展示場 | G-29〜30 (小説|SF)
  • すてぃーるらいふたんぺんしゅうにぶれいくたいむ
  • 久納 一湖
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 122ページ
  • 700円
  • https://team-hattari.jimdosit…
  • 2025/9/15(月)発行
  • ちょっと休憩して、続きへ行こう

    シリーズ4作目。

    ラボ生まれの主人公が、愛を知って平和な日常を噛み締める話など、4話収録の休憩モード本。

    気軽にキャラと世界観を楽しみたい方へ。
    『虚構傀儡の女王』後の時系列ですが、気軽に読める1冊です。
    筋トレしたり昼寝したり、誕生日の話をしながら日常を楽しんでいます。

    TREATMENT

    主人公がトラウマを払拭して、愛のカタチを知っていく話。

    "ある理由から、人間に「さわる=痛み」だった優人は、トラウマ克服のため元担当医に接触治療を依頼する。治療を通じて過去を遡るうちに、今まで仲間たちから向けられてきた感情の意味に気づき、自分の心の内を明かしていく。主人公の愛の芽生えを描く、心温まる物語。”

    #クールな女 #甘える男、#愛の芽生え


    catnap

    主人公、黒澤、高見、拓で、プランク勝負をしながら街の現状を語る話。

    #心地よい日常 #三十代ライフ# 気心知れた仲間たち


    Sparring

    主人公と黒澤がジムでスパーリング対決をし、親睦が深まるかもしれない話。

    #互いを知る #次につながる #健康的


    by the way

    主人公と日向洋子(30代半ば)が短編集『ハードボイルドセレナーデ』での1シーンを振り返る話

    あの時なんて言った? #腐れ縁


    ・登場人物

    伊野田…主人公。普通の研究所員として働いていることに喜び感じてる。趣味はパズル、たまにコーヒー。

    笠原拓…伊野田の相棒。チャラい。何かしようとしている。

    黒澤さん…筋トレとコーヒーが好き。

    高見佳奈…明るく朗らかでしたたか。

    琴平…伊野田の監視者。親代わり。


    ---------------
    作:久納一湖、イラスト:ハルサカ様
    ---------------

    【抜粋】

    「後藤晶先生との食事デートは? 行ったんだろ? 後押しした俺には、報告を聞く義務がある」

    「何言ってんだかわからねぇけど、……。きちんとこなせたはずだ。ミッション完了という感じがして気分がいい。何話したのか覚えてねぇし、帰りにコーヒー貰っちまったけど」

    「ほぉ~? ミッションだと? 優人くん? きみは一体何を言っているのかね?」

     わざと琴平の物言いに寄せた口調で、拓が顔を近づけてくる。

    「完了させてどうするんだよ。次の予定は?」

    「次?」

     案の定、不思議そうな顔を向けた優人を見て、拓は「アァ~」と大げさに頭を抱えた。

    「これだからおまえは! 連絡先、交換したんだろ」

    「ああ、見ろ」優人は得意げに端末を取り出して見せた。

    「これで満足してどうするんだよ。早く連絡して、次のデートに誘うんだ」

    「えぇ? そういうもんなのか? 次って言ってもな……」

     考え込むそぶりを見せる優人に、拓は「悩む気持ちもわかるぜ?」と言って腕を回そうとしたが、優人はわずかに距離を取った。ほぼ無意識だろう。拓はすかさず指摘した。

    「それだよ、それ! おまえは人に触れるようになったのに、未だに避けてるよな! 俺とのスキンシップでさえも!」

    「いやぁ……、日常的に人に触るのって、普通か? あんまりしないだろ」

    「まー、一理ある。俺のスキンシップが過剰かもしれないのは、認める。でもおまえさんの場合、〝触れる=気持ちいい〟って、その頭に認識させておく必要があるみたいだな」

    「認識って言ってもな。触れるのが大丈夫になっただけ結果ヨシなんだが」

    「甘いねぇ。その先が気持ちいいってのに」

    「んなもん、おれにわかるわけないだろ。触っても痛いか不快しかなかったのに」

    「そりゃ仕方ねーけどよ。決めつけはイカン! 俺の言うこと信じろって」

     拓はそう言って両手を差し出してくる。優人は呆れた顔でその手を叩いた。そしてわざと、ふいっとそっぽを向く。

    「動物園のふれあい広場じゃないんだぞ? タッチしておさわりして終了じゃないんだ。人間同士の触れ合いを覚えろ。三十過ぎた野郎に言うことでもないが、せめて、手を繋ぎたいって欲求くらい持ってくれよ」

    「手なんて繋いだら歩きづらくない?」

     コーヒーを啜って、優人は否定した。すかさず拓が身を乗り出してくる。

    「考えてみろ? 手を握って温もり感じたり、アレコレしたり。肌と肌が触れあって、深ぁ~い所まで浸透して、探り合って確かめ合って、分かり合う。そりゃ気持ちがいいもんだ」

    「浸透? 型崩しの打撃と同じじゃねぇか。めっちゃ痛いじゃん」

    「そっちの考えから離れろよ」

     拓はそう言って自分の膝を打った。

    「俺は、おまえに愛を説いてるの、愛!」

    「愛?」

    「俺はずーっと願っているわけだよ。お前が愛のあるセックスを経験できる日が来ることを、ずっと願っているわけだよ。それなのにミッション完了だと? 先に進まんか!」

    「……そんなに言うなら、練習付き合えよ」

    「え? おまえとやるの?」

    「違う。そっちじゃなくて、触る方の練習」

    「あ、セックスじゃなくて、接触練習な、アハハ。びびったぞ。そりゃ、俺は雑食だけどよ。生身のお前にベタベタ触るのは気が引けるからよ。だって万が一不快感が出てきたら、おまえ俺のこと嫌いになっちまうかもしれねえだろお?」

    「そうだな。でも最適なのは拓だろ。エルリに言ったら叩かれそうだし。佳奈ちゃんは、いろんな意味でおかしなことになりそうだし」

    「くろ……」

    「馬鹿。おれが無理だ。想像させんなあり得ない」

     優人は、黒澤の名前が出る前にぴしゃりと言葉を遮った。

    「じゃあ、日向洋子は?」

    「ヨーコ?」

     優人は日向洋子の顔を浮かべた。殴り合いしかしてこなかったような相手だ。想像がつかず、首を傾げる。

    「いやー、なんか違うだろ。お願いしたら考えてくれると思うが。付き合いも長いけど、ヨーコは腐れ縁。あいつに弱点さらすのは嫌だ」

     全滅じゃねぇか。と拓は呆れたように笑う。さすがに彼の口からも、琴平と、その息子である忍の名前が出てこなかったことに、伊野田は少しだけ安心した。彼らなど論外である。すると、拓はポンと手を打った。

    「やっぱよ、ここは後藤先生だろ! 医者に相談するのがいいと思うぜ。連絡してみろよ。ついでにコーヒーでも飲みに行けばいいじゃねえか。一石二鳥だ!」

    「そうか、そうやって声かければいいのか。自然だ」

    「うんうん、いいぞぉ。成長が見られてお兄ちゃんは嬉しい……!」

     そうだ、と言いながら、拓はポケットの奥に手を突っ込んだ。そして何かを掴んで、ぱぁっと明るい顔を向ける。

    「なんだそりゃ」

    「安心安全に気持ちよくなるための、愛の風船、とでも言っておくか。我ながら夢のある言い方だなぁ。配慮がある」

    「おまえ馬鹿じゃないのか。いつも持ち歩いんの? 怖いんだけど」

    「お? いらねぇの? いざって時に無かったら、進むもんも進まないぜ?」

    「いら……、いる」

     拓はアハハ~、素直じゃん。と笑って優人の手の中にそれを押し込んだ。彼は複雑な気持ちでポケットに仕舞うと、端末を操作する。『体質のことで相談があるんですが、昼どうですか』とテキストを作成し、晶へ送信した。拓の帰り間際に返事が届き、翌日のランチタイムに会うことになった。

    (TREATMENTより)






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