若月馥次郎は1920年から1927年まで在リヨン副領事を務め、『桜と絹の国』は1923年の関東大震災に際してフランスで行なった復興支援講演の記録です。 (原典:Fukujirô Wakatsuki, Le pays des cerisiers et de la soie, 1924) 講演はガップとリヨンで行なわれ、流麗なフランス語で震災被害の報告と日本文化の紹介をしつつ、ガップ講演ではアルプスの山並や南仏の詩歌などを挙げて日仏の共通性を謳い、リヨン講演では近代化にあたって日本がフランスから学んだことや絹産業の街リヨンと生糸の一大輸出国日本との絆を述べています。 若月はリヨン市民に親しまれ、今でもリヨン8区には名を冠した「ワカツキ通り」があります。外交官として特別な功績を挙げたわけではないため日本での知名度は低く、著書も邦訳されていませんが、日仏友好に大きく寄与した日本人として記憶すべき人物であり、また当時のフランスから見た日本や日本がフランスに対して宣伝したかったことを伺い知れて興味深いので、訳してみました。