「君、UFOを見たことがあるでしょう。わかるわ、私もそうだもの」
塾の帰り道、古ぼけたアパートの花壇の側にいつも立っている通称「花壇のおばあさん」は、別人のようにハキハキとした声で僕に話しかけてきた。
僕と彼女の間には、UFOを見た者だけに通じる特別な友情が育まれる。花子さんは、「あちら側」に行ったことがあるのだと言う。
新月の夜、かげねこは突然僕の影に住みついた。本体をどこかに落としてきた彼は、影から影を渡って、「あちら側」と「こちら側」を自由に行き来することができるらしい。
勝手気ままなかげねこに振り回されつつ、僕はかげねこと奇妙な共同生活を送ることになった。
ある晩、僕とかげねこは、月から放たれた光る飛行物体を目撃する。
僕は、幼い頃に見た光る電車に飛び乗った。僕は花子さんの石を握りしめ、彼女の想い人を探す。
「降りるべき場所は、着けばわかるよ」双子の言葉に導かれるよう、僕が降りたのはかつて通った塾の最寄り駅だった。見慣れた風景は、いつもと少しずつ違っている。ここは世界の「あちら側」、はてはての町。
僕が花子さんのアパートの前で出会ったのは――