烏丸、海にも森にも、空はかぎりなくひろがっているよ。
そして空は、いつだって宇宙とつながっているんだ。
――――――
30xx/16/35 AM 00:89
烏丸が帰ってこない。伊呂波の部屋をたずねると、柳臣も戻っていないという。部屋のものはあらかた食べてしまって、もうこれしかのこっていないんだ、とスケッチ用のペン先をスナックのように口にほうりこむ。
――海にいったのかもね。
――とけちまうだろ。
――どっちかはのこるんじゃないかな。
柳臣と伊呂波の部屋は、伊呂波だけがのこされて、平坦で透けている。
――――――
僕は朽ちた発動機に崩れ落ちた。熱を持たぬ僕のからだ。かつて熱を持ち、力強く振動していた発動機。黒板に、生物誌を神話のようにひもとく五本の指には、水かきがない。
役目を終えた発動機を抱いて僕は結晶化する。僕のかたちがとけだしさだまろうと凝固しはじめるそばから、螺旋状の雨は降り、すべてをとかした。
――――――
よにんの少年と、ひとりの博士のさいごの物語。
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