狼少年、自称大妖精と旅に出る。
数多の種族と、やわくまぁるい光の玉――妖精が住まう世界で、人狼≪ベルフ≫族の少年ラウは、ひとりぼっちに慣れていた。
大国の種族による迫害を受ける人狼族、その中で更に疎まれていた彼が出会ったのは。
『あたし? あたしは大妖精ティティ様よ』
自らを大妖精と名乗る存在・ティティ。
暇つぶしにと彼女が語ったのは、始まりの大妖精が作ったという二つの笛の物語。
『ねぇラウ。あんた一緒に笛探さない?』
斯くして、半ばティティの口車に乗せられる形でひとり?旅をすることになったラウだが――。
「最終的にしたいのはたった一つ。私は私の大切な場所を、人々を、助けること。それまで、出来れば私の助けになってほしいの」
「私、その笛を探すわ。そして、お父様を、お母様を、皆を、国を――救う」
東の小国、妖精の見えないヒユ族の少女エルザと。
「さっきも言ったけれど、僕は今までずっと笛を探しているんだ、もう何年も。山に森に海に砂漠に……色々回ったけれど、危険ばっかりで情報すら全くない!」
「こんな滅多にお目にかかれないお偉い様の前、協力しませんなんて言えないだろ? もし言ったら、刎られるのはきっと僕の首だ」
西の大国、妖精の見えるダルローラ族の青年アドラー。
ひょんなことで出会った二人を巻き込み、ラウの旅路は別の方向へと動き出す。
狼少年の異世界ファンタジー、第一弾。