【R18】性的な表現と遺体の表現があります。
安直な弔いを拒否する2つの物語。亜美は、病死した父の遺体を抱いて自宅へ連れ帰る。そのとき、愛する父がおぞましい何かへ変化する体験をする。亜美が向き合うのは、死そのものではない。死を迎え、醜く哀れになってしまったもの。その価値を証明するために生きる。
社会が用意した「前を向く」「立ち直る」という物語には収まらない生き方。同性の恋人・千紘との生活もその延長線上にある。
この作品は、社会の物語から外れてしまった人、それでも誰にも見えない場所で懸命に息づいているものを描いています。
「弔い返し」
兄の孤独死をきっかけに、腐敗した身体の痕跡と向き合うことになる。社会は死を弔い、区切りをつけ、前へ進むことを求める。しかし彼女は、その流れに身を委ねることができない。
死臭、腐敗、身体の記憶、同性の恋人タキとの関係を通して、あさ美は「生と死」「血縁」「性別」「性」といった、社会が当然のものとして受け入れている境界を、自らの身体感覚で確かめようとする。
回復や救済へ向かう物語ではなく、答えの出ないまま境界に立ち続ける一人の人間を描いている。