雨が止むまで。私はただ、おおう、おおうと叫んだ。
両の手をついたアスファルトはちょうど人肌のような生ぬるさで、頬擦りしようか迷って、やめた。
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
いろいろな春をいっしょうけんめいに生きて。
生きて、生きて、それでもあふれた気持ちを書きました。
同じ本に束ねることを想定してはいなかった、4つの物語。
大きさも、平熱もちがうふたりが手をとりあうように、気がつけば横にならんでいました。
物語を本にしたのは1年ぶりになります。
壮大な話はひとつもありません。
もしかしたらあなたの隣で起きているような。
そんなちいさくて、でもちゃんとそこにあるお話を書きたいと思って、
そしてこれからも書いていきたいと思っています。
読んでいただけたらうれしいです。
どうぞよろしくお願いします。
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
「さくら、うつつ」
夕方のスーパーで、男はビニールシートと缶ビールを買った。
遠すぎる桜を眺めて、何をするわけでもなく飲む酒はうまい。
「巡礼」
ひとりぽっち、カレーの匂いがなかなか拭えない夕暮れ。
好きだった人のドレス姿は思ったよりも綺麗じゃなかった。
「新町三叉路」
健気に信じ続けた「楽しい」を失って、からっぽの澄春(すばる)。
いつもとちがう帰り道、バスにゆられて、話したことのないクラスメイトと話した。
「しまっておいた雨」
その年の梅雨は、あまり雨が降らなかった。
誰に心を寄せていいかわからないまま、菜乃(なの)はとあるたい焼き屋さんに通いつめる。
𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃
〈書誌情報〉
『しまっておいた雨』
著:まつさかゆう
発行:はなやぎ出版(本屋ブーケ出版部)
価格:1,320円(税込)
仕様:文庫サイズ(105mm × 148mm)並製本 144p
こちらのブースもいかがですか? (β)
今宵はここまでに とみちゃんの研究ラボ 乃帆書房 vellnet-online 夕方もちベぇ 日本現代詩歌文学館 レジャーシーターズ ゆきのこ舎 lonely star books 山形駅前歌会