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しまっておいた雨

  • A-14 (ノンフィクション|エッセイ・随筆・体験記)
  • しまっておいたあめ
  • まつさかゆう
  • 書籍|文庫判(A6)
  • 144ページ
  • 1,320円
  • 2026/6/21(日)発行

  • 雨が止むまで。私はただ、おおう、おおうと叫んだ。

    両の手をついたアスファルトはちょうど人肌のような生ぬるさで、頬擦りしようか迷って、やめた。


    𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃


    いろいろな春をいっしょうけんめいに生きて。

    生きて、生きて、それでもあふれた気持ちを書きました。


    同じ本に束ねることを想定してはいなかった、4つの物語。

    大きさも、平熱もちがうふたりが手をとりあうように、気がつけば横にならんでいました。


    物語を本にしたのは1年ぶりになります。


    壮大な話はひとつもありません。

    もしかしたらあなたの隣で起きているような。

    そんなちいさくて、でもちゃんとそこにあるお話を書きたいと思って、

    そしてこれからも書いていきたいと思っています。


    読んでいただけたらうれしいです。

    どうぞよろしくお願いします。


    𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃


    「さくら、うつつ」

    夕方のスーパーで、男はビニールシートと缶ビールを買った。

    遠すぎる桜を眺めて、何をするわけでもなく飲む酒はうまい。


    「巡礼」

    ひとりぽっち、カレーの匂いがなかなか拭えない夕暮れ。

    好きだった人のドレス姿は思ったよりも綺麗じゃなかった。


    「新町三叉路」

    健気に信じ続けた「楽しい」を失って、からっぽの澄春(すばる)。

    いつもとちがう帰り道、バスにゆられて、話したことのないクラスメイトと話した。


    「しまっておいた雨」

    その年の梅雨は、あまり雨が降らなかった。

    誰に心を寄せていいかわからないまま、菜乃(なの)はとあるたい焼き屋さんに通いつめる。


    𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃


    〈書誌情報〉

    『しまっておいた雨』

    著:まつさかゆう

    発行:はなやぎ出版(本屋ブーケ出版部)

    価格:1,320円(税込)

    仕様:文庫サイズ(105mm × 148mm)並製本 144p

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