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文学フリマ岩手11出店者
草幻社(ブース: D-31)
世界少年デー
こちらのアイテムは2026/6/21(日)開催・
文学フリマ岩手11
にて入手できます。
くわしくは
文学フリマ岩手11
公式Webサイトをご覧ください。(入場無料!)
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世界少年デー
D-31 (小説|短編・掌編・ショートショート)
せかいしょうねんでー
梓野みかん
書籍|新書判
48ページ
400円
2026/6/21(日)発行
【今回の新刊です!】
わたしの世界で、わたしは少年である――
ある日目にした、ローカルニュース。
それは、ラピスラズリの原石が発見されたこと。
呼び起こされる「アウイン」との記憶を辿り、
原石が展示されているミュージアムへと
「わたし」は車を走らせる――。
◇
「少年」というものについて、自分なりに書き留めておきたいなと思っていたところへ、国内初のラピスラズリ発見の報を聞き、まんまと飛びついてしまいました……。
タイトルに「少年」と入っているのに、少年らしい少年は登場しませんので、何卒ご容赦いただければと思います。
何かしら響くものがあれば作者として幸いに思います!
◇
〈 ↓ 冒頭部の試し読みはこちら ↓ 〉
わたしの世界で、わたしは少年である――
「どうした?」
夫がネクタイを締めながら、わたしに聞いた。すぐにテレビのほうから目を離し、わたしは手にしていた泡だらけの茶わんを蛇口の下に戻した。
「ううん、べつに」
夫はわたしの返事をさほど気に留めずに、今日はちょっと遅くなるかも……打ち合わせが重なっててさ……などとブツブツ言いながら上着に袖を通し、バタバタと靴を履いて玄関のドアを開けた。いってらっしゃい、とわたしが首をのばして夫のほうへ言うと、いってきます、という低い声がアパートの階段を下りていく足音にまじって聞こえ、バタンと閉まったドアがその残響を遮った。
テレビは先ほどのニュースを終えて、天気予報に変わっていた。
洗い桶に浮かぶマグカップにくっついていた泡が、するりとすべって桶の水面に散っていく。ふいに強くさしこんだ朝の陽の光が、マグカップに描かれた青い小花模様に反射した。
あれは、ほんの小さなローカルニュース。
この県内で、ラピスラズリの原石が採掘されたこと。
正直こんなニュースは、夫の職場でも、わたしのパート先でも、朝練のために早く出て行った娘の部室でも、きっと話題にならない。ラピスラズリは確かに青くてきれいな石だけれど、ダイヤやルビーほど高価なものではないし、日本国内での発見が今回初めてらしいけれど、町で号外が配布されるほど耳目を集める存在でもない。せいぜい、明日の朝刊にちょっとした記事が載るくらいだろう。
それでも、そのニュースはわたしには十分すぎた。
わたしのなかの、わたしの世界を呼び覚ますには。
そして、わたしの世界でわたしが少年であることを思い出すには。
かつてわたしとともに少年であった「アウイン」の名を、だれもいなくなった家のなかで、小さくつぶやいてしまうくらいに。
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